第4章 結末、その先。

第18話 超人

 物語の結末は、きっと唐突なものなんだろう。



 その日の夜、俺はベットに入り、今日の羽島さんとの話について考えていた。

 羽島さんは、俺に好きな人がいることを打ち明た。そして、俺にその相談に乗ってほしい、とお願いされた。

 俺は羽島さんが好きなのに……。なんて残酷なことだろう。

 だが、俺は意識がおぼろになりながらも、それを快く受け入れた。

 羽島さんの恋に協力することを決断した。それを断ることなんて、考えていなかった。

 羽島さんの恋に協力するってことは、自らの首を絞めることだ。

 羽島さんが別の男と仲良くしているのを近くで見るのは、絶対に辛い。もし本当に羽島さんの恋が成就してしまったら、きっと今よりも遥かに辛いんだろう。

 そんな切ない想見に胸が詰まる。

 でも、羽島さんの恋に協力するってことは、羽島さんの近くにいられるってことだ。

 もし羽島さんのお願いを断っていたら、きっとこれから羽島さんと話すことは少なくなっただろう。

 そんなことには、したくない。

 これは貴重な羽島さんと話すきっかけであると思う。

 自分から羽島さんを離れることなんてしたくない。

 こんな状況でも、まだ好きだから。

 好きだけど、羽島さんの恋は応援したい。

 ……やり方によっては、羽島さんの恋のを、できるかもしれない。

 でも、そんなことをするつもりはない。

 恋がうまくいかないってことは、こんなにも辛いことなんだ。胸が裂けるようで、たまらなく切ないものなんだ。今日、よく理解した。

 羽島さんにこんな想いしてほしくない。

 俺は羽島さんの悲しむ顔が見たいんじゃない。羽島さんの笑顔が見たいんだ。

 羽島さんには、幸せであってほしい。

 俺は羽島さんが好きだ。でも、俺は羽島さんの恋を応援する。この先辛いことも沢山あるだろう、と分かって。

 前を睨みつけながら、俺はこんな複雑な決意をした。



 その羽島さんの好きな人というのは、『上峯碧かみみねあお』という奴だ。隣りのクラスで、去年同じクラスだったからまずまず仲はいいんだが……こいつはまあすげぇ奴だった。

 顔はクールでシュッとしている学年でもトップレベルのイケメン。定期テストでは入学してから一度も譲ったことのない不動の学年一位。陸上部では短距離のエースとして活躍している。

 あらためて並べ立てるとこいつエグいな。欲しいものを引くほど全部持ってる。

 上峯は、そんな神に選ばれたみたいな奴だった。

 羽島さんが好きになるのも当然だな……。かわいい羽島さんとイケメンな上峯はお似合いな気もしてしまう。

 やっぱり、俺が羽島さんとうまくいく可能性はほとんどないのかな……。

 俺もこんなイケメンだったらなぁ、と密かな野心が生まれた。

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