第16話 結末
物語はうまく進んでいるように見えていた。でも、そんな簡単なものでもなかった。
✿
時はもう冬本番の気候で、室内でも肌寒さを感じる。
今日はテスト最終日から五日後の、答案返却日だ。
テストの結果は、悲惨だった。入学以来初の赤点も獲得してしまった。今回は羽島さんのせいってことにしておこう。
どんどん返ってきてほしくないテストが返ってくる。
だが、今日の俺もどこか上の空だった。
今日の放課後、羽島さんから呼び出されていた。
あの日の後、羽島さんにラインで俺の予定を送って、羽島さんからは『ちょっと予定確認するね!』と返信が来て終わっていた。
きっと今日、その答えが聞ける。
羽島さんとデートに行けるのか、行けないのか。これは何よりも重要なことである。それによってすべて変わる、と言っても過言ではない。
しかも、今回は自分が頑張るとかじゃなくて、完全に相手の都合だからどうにもできない。ただドキドキすることしかできない。
あぁ、はやく終わらないかな。
そんな思いと共に時間を過ごし――、
「はぁーい、じゃあ次は終業式で会いましょー。号令おねがいしまぁーす」
「きをつけー、さようならー」
「「「「「さようなら」」」」」
遂にホームルームが終わった。地獄のように時間が長く感じた。
ホームルームが終わるとすぐに羽島さんが俺のもとに来る。
「ふ、福島君! ちょっと五階来てもらっていいかな?」
「……うん!」
どこかいつもより固い面持ちの羽島さんが言う。
五階へ上がり、静まり返る廊下で羽島さんと対面する。
今日は綺麗に編み込まれた髪に、透き通った目。毎回羽島さんと対面すると圧倒されてしまう。めちゃくちゃかわいい。
そんな羽島さんは、口を開く。
「あのさ、この前のことなんだけど……、ごめん!」
羽島さんが申し訳なさそうに言う。
「福島くんの予定空いてる日に親戚の家に行くことになってて……! ほんとにごめんね……!」
まじか……。
だが、実際それは無理もないと思っていた。だって……野球部のオフがお正月の六日間しかないから。
野球部といえば休みが少ないことで有名だが、冬休みは年末から三が日にかけての六日間しか休みがなかった。
誘うまで自分でも全く気付かなかったが、よくよく考えたらそんな忙しい時期に誘ってオッケーしてもらえるわけない気がしていた。
ある程度覚悟はできていたつもりだったが……、いざ断られると辛い。
イルミネーション見たりとか、雪が降ってきたりとか、俺の密かな妄想が一瞬にして打ち砕かれた。一緒に出掛けられためちゃくちゃ楽しかったんだろうなぁ。
心が悔しさが滲む。
ここからさらに大きな追い打ちが待っているなんて、この時の俺は思ってもみなかった。
「こっちこそこんな忙しい時期に誘っちゃってごめんね!」
心の悔しさを抑え、俺は平然と話す。
「いやいや、全然! あとさ……」
「ん? どうしたの?」
なにやら羽島さんの雰囲気が変わる。いつもの感じじゃない。
「これ言おうかめっちゃ迷ったんだけど……、福島君優しいし信用できるし、言ってもいいかな……?」
羽島さんは紅潮した顔の上目遣いで言う。
「う、うん。全然いいけど」
羽島さんは口を開く。
それは、唐突すぎる言葉だった。
「私……好きな人がいるの」
――目の前が真っ暗になった気がした。
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