第14話 向上

 時は期末テスト最終日の前夜。

 俺はエナドリを呷りながら、机に向かっていた。

 修学旅行が終わるとすぐ一週間後に期末テストがやってくる。修学旅行の余韻なんて感じている暇はない。

 今回のテストは、確実に今までで一番出来が悪い。

 元々頭が悪い方ではなかったが、今回は今までにない赤点の気配すら感じる。

 ……それなのに、なかなか勉強に手が付かなかった。心では焦っているはずなのに、机に向かってもぼーっとしてしまう。

 その理由は……明確だった。

 羽島さんのことを考えてしまうんだ。

 恋とは恐ろしいもので、その人のことを考えると他の事が全然手に付かなくなってしまう。

 羽島さんとはそれから、ちょくちょく話したり、ラインしたりしている。

 挨拶をすれば笑顔で返してくれるし、ラインでも会話が続いている。

 もしかしたらいい感じだったりするのかな……。いや、ただの友達だよな……。

 俺は初めての恋に翻弄されていた。

 今は、きっと羽島さんの友達でしかない。

 このままずっとこの関係で終わってしまうんじゃないか、そんなことも感じる。

 ……もっと仲良くなりたい。友達以上に、なりたい。

 ただ話したりラインしたりする関係よりも、もっと親密な関係になりたい……。

 でも、俺なんかが……。

 俺は複雑な恋心と戦っていた。

 明日のテストが終われば、まだ数日の登校日はあるが、実質的に冬休みが始まる。

 明日が終われば、しばらく羽島さんと会えなくなってしまう。

 そんなの……嫌だ。

 かわいい羽島さんと、もっと話したい。もっと仲良くなりたい。

 冬休み中、デート誘ってみようかな……。

 そんな一つの想いが、萌え出した。

 このままじゃ、きっとこのままだし、もう一歩前に行きたい。

 誘うタイミングとしても、悪くはないんじゃないかな……。

 俺は複雑な恋心を振り払って、決意した。

 明日羽島さんをデートに誘おう。

 大きな期待と、それと同じくらい大きな不安で胸がチクチクする。でも、確実に気分は高揚していた。

「頑張ろ……!」

 俺はそう呟いて、テストなんか諦めてベットに飛び込む。

 そして、羽島さんにこんなラインを送った。


『明日の放課後ちょっと話せないかな?』

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