第9話 心得
修学旅行最終日、朝九時。場所は国際通りへと向かうバスの中。
昨日はほとんど寝ていないので身体がめちゃくちゃ重い。
でも、そんなことはあまり気にならなかった。
昨日のバスの中での羽島さんとの約束。その事を考えていた。
昨日思わず飛び出た言葉だったが、言ったからには履行したい。
今日はいつもの四人で行動するから、どこかで羽島さんと出会い、羽島さんに「写真撮ろ!」って話しかけること。
簡単そうに聞こえるかもしれないが、きっとそんな簡単ではない。
まず国際通りで出会えるかも分からないし、出会えたら自分から話しかけないといけない。今まで女子とほとんど接してなかった俺にはそれだけで難易度が高い。
でも……、絶対にうまくやり遂げたい。
羽島さんと、話したい。羽島さんに、頼りになるところを見せたい。
羽島さんが、好きなんだ。好きな人との約束は、男なら絶対に守りたいものだ。
これからにワクワクする気持ちと、不安が綯い交ざる。そんな胸中は、まるでチャンスでバッターボックスに立つ時のような気持ちだった。
羽島さんのことを考えるだけで鼓動が高まる。ドキドキしてくる。
この勝手で気持ち悪いモブキャラの恋愛物語だが、この物語を進展させたい。
絶対に成功させたい。
『――バスは間もなく国際通りに到着しま〜す』
バスガイドさんの声は、物語の始まりを意味する。
……はじまる。
俺は強い気持ちで、この修学旅行のメインイベント・国際通りへと足を踏み入れた。
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