第6話 伏線
突然の一大イベントが過ぎ、どこか興奮が冷めやらぬテンションで俺たちは沖縄ワールドの
玉泉洞とは、沖縄で有名な
しかし、洞窟と言っても岩の道をくぐり抜けるなど探検チックなことは全くなく、地下水の上に設備された鉄製の遊歩道を歩いていく。洞窟の怖い雰囲気もなく、地底を埋め尽くす地下水がカラフルにライトアップされているので、とても美しい景色が広がる。
俺らのハイテンションとはベクトルの違う神秘的な雰囲気の中、俺ら三人は景色そっちのけで熱談していた。
「基マジパネェ! メチャクチャかっこよかった‼」
ちなみに基は安達さんと二人で回っている。
「アイツだけ進みやがって……ちくしょうめぇぇ!」
「落ち着けって」
隆二は今日の朝もテンションが低かったけど、基の告白で完全にトドメを刺されたみたいだ。さっきからより気性が荒い。
「でも、なんかほんと先越されちゃったなー……」
かっこいい告白をしている基を見ていると、なにもない自分が情けなく感じる。基のようなかっこいい主人公と、その脇にいるなんでもないモブキャラ。どこかそんな気がしてしまって、俺の心に悔しさが滲む。
「ねえ、マジめっちゃキレイ」
「おお……」
ガラス細工のように青く照らされた水と、氷柱のように無数に生える
淡く深い青を見ていると、今の気持ちと合い重なってセンチメンタルな気持ちになってくる。
「……おい、彩太。ここにいると青い水に飛び込みたくなる……。はやく行くぞ」
「……なんでだよ!」
隆二は突拍子もないことを言い出す。
もう少し景色の余韻に浸っていたかったが、本当に飛び込んでしまったらシャレにならないし、こいつなら飛び込みかねない。
俺と隆二は青の泉を後にする。
俺も青春したいなー。
美しい景色を横目に、俺はそんなことを思う。
基はもちろん、俺からすれば隆二も結果は悪いにしても、青春している。そのことに、憧れる。俺もそんな物語のような青春してみたいなー。
そんな儚く淡い気持ちに蓋をして、鉄の遊歩道を歩いていく。
……あれ、そういえば柊斗が来てねぇ。
後ろを確認すると、柊斗はまだ青の泉の前にいた。
その後ろには……羽島さんがいた。そして、羽島さんがなにやら柊斗に話しかけている、ように見えた。
が、後ろのグループからの人の流れに押し出され、柊斗は羽島さんに気付かず、こちらへ来た。
「うぃー。わりわり」
「おう。……なんか、羽島さんが話しかけてたみたいだけど大事だったのか?」
「ん? なんのこと?」
「あ……さっき柊斗が景色観てたとき――」
゛バッシャーン゛
――突然、なにやら異様に迫力のある音が響く。
その一瞬後、高く水飛沫が舞い上がる。
俺と柊斗が目を合わせ、冷や汗を浮かべる。
隆二の姿は…………もうない。
俺は遠い目で水に飛び込んだ友人から目を逸らす。
あいつは俺らの想像を遥かに越えるバカだった。
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