第4話 青春

 修学旅行一日目、夜。

 修学旅行は、やはり恐るべし体感速度で過ぎてゆく。楽しいことは一瞬で過ぎるんだなぁ。

 俺たちの四人部屋は、沖縄まで来て大していつもと変わらない雑談に花を咲かせていた。

「あぁー、まじでかわいかったなぁ〜!」

 いつもよりテンションの高いこいつは、成功者の基。

 意中の相手である安達さんと初日からツーショットが撮れたらしい。

「あぁー。でも緊張しすぎて写真写り悪過ぎなんだけど。この顔安達さんに見られるとか死ねる」

 基は贅沢な文句を言う。写真見せてもらったけどそんな変な顔じゃなかったけどな。

「うるせぇ、ごろすぞぉぉぉーー!」

 そんな雄叫びをあげるこいつは、失敗者の隆二。

 なんと、沖縄に来ての今日、彼女に振られたらしい。

「何がいけなかったんだぁ! この前どさくさに紛れて胸揉もうともたことか⁉」

 なんてことしてんだよ。

 つい一ヶ月程前から付き合いはじめて、今日急に振られたらしい。流石に可哀想ではある。

「温度差でカゼひきそうなんスけど」

「ほんとだな」

 どこか熱心にスマホをいじりながら、柊斗はつぶやく。柊斗は今日は何もなかったみたいだ。

 ……なんか、みんな輝いてるな。

 俺はどこか羨望の眼差しで友人達を見ていた。

 基も、隆二も、良くも悪くも青春を謳歌している。青春に真っ向からぶつかっているから、嬉しいし、悲しいんだ。

 それに対し俺は、高二で未だに彼女とかできた事ないし、本気で好きになった人もいない。

 かっこよくもないし、運動も勉強もそこそこ。女子を楽しませる話術を持っている訳でもない。こんな俺がモテるわけもない。

 俺なんにも持ってないな……。俺もいつかこんな青春できるのかな……。

 もう一度浮かれた基の顔と、ヤケになって荒ぶっている隆二の姿を見る。なんか、二人とも俺よりも遥か先に進んでるな……。

 そんなどこか複雑な想いと共に修学旅行の夜は深けていく。



<修学旅行活動日誌 一日目>

 青春がしたいと思った。

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