第2章 会話、それから。
第3話 前兆
修学旅行。それは、ただ楽しいだけで終わっていくと思っていた。だけど、そんな事はなかった。
✿
羽田空港の太陽の塔前は、朝早くから落ち着かない雰囲気に包まれていた。
俺ももちろん、落ち着いていなかった。
「おう!」
「お、
俺は
うちの学校の修学旅行は私服で来ることになっている。
普段ほとんど制服姿しか見ないが、みんな私服だと別人のように見えるな。……てかコイツらめっちゃオシャレじゃね?
もっと服装に気を使っていればよかった、と俺は大きな後悔を抱いた。
そんな俺の密かな焦燥なんて知らず、みんなハイテンションだ。
「なあ、安達さんの服見た? 可愛すぎて、えぐい」
基はだらしない笑みを浮かべる。そんな隆二みたいな顔するなよ。
安達さん――
そして――、基の好きな人でもある。
基と安達さんは、日常でも結構話したり、誕生日にはプレゼントをあげたりと、かなりいい感じだ。というか、ほぼ付き合っているような状態である。付き合うのも時間の問題だと思う。
「修学旅行中、進展つくりたいなぁ……」
そんな乙女のような呟きの基は、恋をする顔だった。
「なあ、羽島さんめっちゃエロいぞ!」
「ちょっ、お前、バカかよ! 聞こえたらどうすんだよ!」
「あ……やべ」
様子を見ると恐らく羽島さんには聞こえてなかったみたいだ。でもこいつは一回痛い目を見た方がいいと思う。
「でも、たしかに羽島さんマジパナくね?」
「……たしかにな。すげぇかわいい」
羽島さんは、ベージュのやや胸元が開かれているシャツに、黒のロングパンツを着ていた。真っ白な肌に、長くおろされた髪からは無垢な笑顔が輝く。その姿は美しい天使のようだった。
「……狙っちゃおっかなー、なんつって!」
そんな俺らは、それぞれがそれぞれの物語を持って沖縄に飛び立った。
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