第2話 仲間

「羽島さんめっちゃかわいくね!?」

「「「かわいい」」」

 学校の最寄り駅からの通学路、男子の会話はこんなものだ。

「だよね! なんか抱きしめたくなるような、守ってあげたくなるようなかんじ?」

 朝からテンションマックスで話すこいつは上村基うえむらはじめ。端正な顔立ちで、目にかかるくらいまで伸ばした髪の毛に、爽やかな笑み。背中に背負うギターからも、いかにもモテそうな男子高校生という感じだ。

「なあ、見たか? 転校生、めっちゃ胸もでかかったぜ‼」

 ――――――。

「……お前、揺るぎないな……」

 全員が隆二にシド目を向ける。

 一瞬にして場の空気を凍らせたこいつは杉谷隆二すぎやりゅうじ。俺と同じ野球部だ。坊主頭で、くっきりとした濃いめの顔に、気持ち悪いにやけた笑みを浮かべる。野球部らしいがっちりとした体躯がもったいない。

「ハハッ、隆二マジパネェ」

 言葉遣いがチャラいこいつは、斉賀柊斗さいがしゅうと。すらっとした高身長とその半分ほどをしめる長い足。ワックスで固められた髪に、着崩した制服。いかにもチャラそうな見た目をしている。

 こんなどこか凸凹な四人が、いつものメンバーだった。

「俺、はやくも転校生のインスタ特定したぜ!」

 隆二はドヤ顔でサムズアップする。

「だからお前キモいぞ」

「訴えるぞ」

 俺と基の集中砲火を浴びても隆二はへこたれない。

「これこれ!」

 ああだこうだ言いつつも、みんな揃って隆二のスマホを覗く。

 そこには、加工された友達との写真や、おそらく前の学校のものと思われるクラスの集合写真などが載っていた。いかにも女子高生のインスタっぽい。

「へー、めっちゃオシャレな感じじゃん」

「それな」

「これ前の家からの景色だってー! パネェ!」

「すげぇ。めっちゃ都会じゃね」

 まわりには高いビルがいくつもあった。

「羽島さん都会の方から来たのかな?」

「そうかもな」

「おい! これ見ろ! コスプレしてるぞ!」

「お前まじで揺るぎねぇな!」

 こんな転校生を考察する、ありふれた通学路。



 それから、羽島さんが馴染むのは速かった。

 騒がしすぎずお淑やか系の女子グループに属し、明るい性格により沢山友達を作っていた。

 男子からの人気も、自然に高くなっていた。誰をも魅了するかわいい顔、明るい性格、身長はそこまで高くないがメリハリのある男子の理想的なスタイル。

 そんなすげぇビジュを持つ羽島さんは、うちのクラスはもちろん、他のクラスの男子からも人気の存在になっていた。

 彼女は、まさに主人公だった。俺とは別次元の世界にいる。そう、思っていた。

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