6.前の席の女子と夏祭りに行ったらヤンデレ爆発した
ついに、花火大会の日がやってきた。
普段はだだっ広く、少年野球チームが練習をしている程度の海岸公園は、屋台と浴衣に身を包んだ人たちでにぎわっていて、
(待ち合わせ場所……あれだ!)
華やかな空気をかき分けて。待ち合わせ場所の謎のオブジェを見つけ、
(1時間前に着いてしまった……)
(これはさすがに早すぎた……)
花火が打ち上がり始めるのが19時で、
ゲームアプリで時間をつぶしたいが、ゲームに夢中になって
「あ、
浴衣美女が
「誰……って
そして、リボンみたいに締められた黄色の帯がいいアクセントになっていて──
(あの水やりサボり常習犯がモデルみたいになっていいのかよ?! いやなっとるわ!)
「
「クラスメイト」
(
(いくら悩んでも
一応、
(俺のこと、好きなの? って聞いて、は? ありえないんですけど? って言われる可能性がゼロじゃない限り、こんなことは聞けない)
決定的なことでこの関係を変える勇気は、
「男? 女?」
「女」
「やるじゃん」
ニヤニヤと笑う
あ、これは恋愛に持っていかれるパターンだ。
「そういう
「彼氏」
「えっ彼氏いたの?!」
初耳なんだが。
「私のことはいいけどさー、もしかして
「……そうだけど」
「えっ、
「は?」
「あの時の
そう前置きして、
◆
女子トイレに忘れ物をした、と言う
女子トイレの個室の扉は全て開いており、2人きりのようだ。
「忘れ物探し、手伝ってくれてありがとね」
「いいってば。話の続きなんだけど、
かひゅっ、と
殺気をまとったまま、
「
極寒の吹雪のような声だ。
「
「わかった?」
吸い込まれそうな底知れない闇に、
「……わかった」
「それならいいの。
「助かっ、た?」
汚いから早く立ち上がらないと、と呼びかけてくる理性以上に、命の危険が去った安心感に浸っていたい。
(それにしても
立ち上がる力が戻ってきた時。真っ先に
「
「ありがと。ちょっと色々あって」
「お腹痛くなった……にしては元気そうだし、何で笑ってるの
仲間に言われ、自分が笑っていることに
怖かったけど──やっぱり、他人の恋愛話を聞くのは、楽しい。
「笑って……ってちょっと命の危険を感じる恋バナに付き合わされたからかな?」
「意味わかんなーい」
そう言い合いながら、
◆
「──って感じでさ。
「素直に言っていい? 納涼ホラー番組?
「本当にあったことだって──っ!」
ちりりん。
鈴の音がして、
花火大会の
鈴の音をきっかけに、
顔は見えないが、いる。
「……
「……
赤い帯に、紺色の浴衣。黄色い花火が打ち上がっている上品な柄。
今日はハーフアップではなく、和風のお団子にまとめているが、鈴付きのかんざしを
「その女、誰?」
ゆっくりと
今の
「あの女の次に好きなの、私? うんわかった、私が
黒い笑いを浮かべる
さっと表情が消える
(この2人の表情……あの日とそっくりだ!)
(そういえば、忘れ物探しをした後、はじめて
俺と話す事に、恐怖を感じるどころか──
(俺は
「それはやめろ! 俺は、
サボり魔で、知らないうちに俺より先に恋人を作っていて、全てを恋愛話に結びつける困ったクラスメイトが
「
「そういうんじゃなくて!」
「え? そういうことじゃない?」
しぐさだけなら無邪気だが、闇のような殺気は健在なままだ。
「普通に考えて、クラスメイトが大ゲンカしようとしているのを見たら止めるだろ! 知り合いがケンカしてるのを見たら心が痛くなるタイプの人間なの、俺!」
「
そう言うと、
「私以外の女を大切にするなんて……」
その言葉は、祭りの雑踏にかき消されてしまって、
「ごめん。聞き取れなかった。もう一回言って?」
「でもわかったよ。私、
「
「待って」
とんでもなく話が飛躍した。
「……ぅうっ……ひぐっ……捨てないでぇ……」
大粒の涙が、
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