第四話 想いを伝える

「アンネリア、来てくれてありがとう。あれから少し時間が経ったけど、気持ちは落ち着いたかい?」


「そうね。少し落ち着いたかな。今は冷静に何をすればふたりが嫌がるかを考えられるもの」


「まだそんなことを言っているのか? アンネリア、いつもの純粋で優しいキミに戻ってくれよ」


「もう無理よ。あのふたりのことを考えると憎くてしょうがないの。私も冷静になって考えたわ。これくらいなんでもないって言う人がいるのも知っている。でも私は駄目なの。レンツィオ様は私を抱きながら『大好きだよ』って言っていたのに、きっと今はツィアーナにそれを言っているのよ」


 ミリアーノは話を遮るようにアンネリアを抱きしめた。強く強く抱きしめた。


「僕じゃ駄目かい?」


 そしてアンネリアの耳元でそう呟いた。


「え? ミリアーノ急にどうしたの?」


「僕はもう見ていられないんだよ。アンネリアがしたくもない復讐をしている姿なんて。僕の大好きなアンネリアのそんな姿は見たくないんだ」


「大好き?」


 アンネリアは少し動揺している。抱き合っているふたりにお互いの顔は見えていない。


「大好きさ。もちろんひとりの女性としてだよ。僕はアンネリア、キミが好きだ。だから復讐にとらわれてほしくないんだ」


「え……ごめんミリアーノ。そんな、私気付かなかった」


 ミリアーノはアンネリアの体を自分の体から少し離し、笑顔で顔を見つめた。


「僕だって気付かなかったよ。最近気付いたんだ。僕じゃ駄目かな?」


「……ミリアーノは私で良いの? 私こんなだよ」


「アンネリアが良いんだよ」


「ありがとう。でも少し時間をちょうだい」


「わかった。ゆっくり考えて。いくらでも待つよ」


 ミリアーノはとても優しい笑顔だった。その笑顔を見てアンネリアは泣いてしまった。

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