第四話 仕方がない
帰りの馬車に揺られながら、クラリエットの父親は重い口を開いた。
「……似てたな。母親に」
「はい。そっくりでしたね」
「あんなことってあるんだな」
「あるんですね。奇跡ですね」
「……あれは仕方がないよな?」
「仕方がないですね。あの方々から見ればわたくしは確かに醜女(しこめ)なのかもしれません」
クラリエットも父親も黙ってしまった。沈黙は数分続いた。
「……この前言ってた色々な貴族から言い寄られているというのは誰のことなんだ?」
「セルジャック様とゴーチアン様とセルジール様ですわ」
「セルジャック辺境伯様か!? もっと早くそれを言いなさい! よし、私が話をつけてきてやろう」
*****
半年後、驚くほどスムーズにセルジャック辺境伯とクラリエットの婚約は決まった。家柄だけでなく人格も優れているセルジャック辺境伯との婚約はクラリエットにとって良い結果だった。
「お父様、色々ありましたがわたくし幸せになれそうです」
「本当に良かった。ジェローム君はジェローム君で幸せになるだろう。全員にとって良い結果で終わったということだ」
「わたくしは卒業パーティで侮辱されて婚約破棄されましたけどね。今となっては笑い話です。なんせあの『最愛の女性』なんですもの」
「確かにあれは衝撃的だったな。お前も本当は私にソックリな顔の男が良かったんじゃないのか?」
「……」
クラリエットは冷めた目で父親を見つめた。そうしてクラリエットは父親と話すことをやめた。父親に対するクラリエットの無視は数日間も続いた。
【完結】ブサイクなあなたに醜女と言われて婚約破棄された私ですが無事幸せになれそうです あなたの隣にいる女性の顔って…… 新川ねこ @n_e_ko_
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます