第35話:無双のお時間再開です。

 森へ戻ってきてから、少しして再び魔物とエンカウント。今まで見たことない魔物だったので少しだけ嬉しい。


取り敢えず、鑑定──


個体名モスワーム:魔蟲。モススモスの幼体。下位個体。


──大きな口だけあってミミズだか幼虫だか、分からない姿をした巨大な蟲。てかこいつ進化する気配……幼体ってあるし。お腹空きそうな名前だけど、今の状態では正直触りたくないでござる。


 でも、一度は触らないとどうしようもないし……また木刀でどうにかするしかないな。


まずは──と動こうとするとモスワームが真っ二つになった。


 何事!? と思うと同時に、巨大なカマキリが乱入してきた。うわ……カマキリってデカいと前脚の鎌が凶器でしかないな。


まずは鑑定──


個体名ザックマンティス:魔蟷螂。中位個体。


──俺の獲物を横取りした、カマキリの魔物は中位個体だった。まあこれだけ凶暴性があるなら下位ではないよな……。


 とにかく横取りは許さん。ザックマンティスはモスワームを殺したものの、食べる気がないのか食いつきはしないので、転移で真っ二つになったモスワームの側に行き切断面をタッチ。討伐証明部位は書いてないから魔石を回収すれば君はもう用済みだ。安らかに眠れと埋葬転移。


それを見たカマキリは、キシャー! と鳴いて臨戦態勢。ただの獲物と思っていた俺を敵認定した感じだと思う。鎌を振り上げそれを開いた。……開いた? カマキリの鎌って開いて一回りデカくなるようなものだっけ!?


《魔物だからよ……》

呆れ気味な気配がするけど、ツッコミありがとうございます。女神さま。


 でもこれ、早めに触れないと俺の命の危機では? ゴブリンキングの時よりも状況は最悪なんですけど。まだ同種に触れたことないし! 何が同種か知らんけど。


 ふぅ……取り敢えず落ち着いて行動しよう。まずは木刀で──いや、毎回あとになって思うことがあるじゃないか。


 不意打ちで背後に転移。まさか目の前の獲物が、背後に現れるなんて思ってないザックマンティスは俺を見失う。そこをすかさず、隙あり! とタッチ。


 ふはははっ 形成逆転だ! キャラ崩壊しそうなくらい、どうだこの野郎って感じ。何度でも言うが、一度でも触れてしまえばこっちのものだ。


 覚悟しろザックマンティス。まずはその、危ない鎌をおさらば転移で本体から切り離す──なんて回りくどいことせずに魔石を転移。もちろん汚れは取り除く。


 はい、ザックマンティス討伐完了。こちらも討伐証明部位が書いていないので魔石を納品袋へポイ。注釈としてザックマンティスの鎌は、硬く丈夫なので加工素材になると書いてあるが、袋がいっぱいになるしなんとなく片方だけでいいや。残りは他の魔物同様に、ベリッと開いて臓器に触れて全部埋葬転移。


 さて次は何が出るかなーと歩き出す。少し歩くと何か違和感。何かは分からないけどなぜか違和感を感じた。んー? なんだこの感じ。


 不思議な感覚のまま取り敢えず歩く。歩いていると視線を感じた。その視線の方を向いても何もいない。んん? 幽霊的な? いや、それにしてはなんか……そう思っていると不意にどこからか攻撃をくらった。


痛──くはない。鞭みたいなのを背中にくらったはずだが……。


《用心するのはいいことだし、実際私がステータスを隠しているのも、おごったりしないようにだけど、シズヤは普通の人間より大分頑丈だから、大袈裟にビビることはないわよ?》

ちょっとやそっとじゃ死なないって言ったでしょ? と女神さま。


 あーそういえば、忘れそうになるけど俺の力って、転移だけじゃないのか……なら──でも慢心しない、驕らないってのは大事だからやっぱり用心はしよう。


そして今ので違和感の正体が分かった。


 俺はあえて、気付いていないふりをしてさり気なくソレに触れた。そして手元に魔石を転移。するとすぐ横の木が倒れた。そう、正体は木と同化した魔物だった。


鑑定──


個体名トレント:魔木。中位個体。


──木の魔物なんて森に紛れていたら犠牲者は多いだろうな。これから違和感を感じたら手元に魔石転移だな。


 違和感の時点で鑑定してれば──とか言わないで。いきなりそこに行き着くほど、俺の頭の回転は速くないです。誰に言うでもなく言い訳してみる。


 トレントはベリッとする必要ないので、魔石取ったら埋葬──する必要あるか分からないけど一応埋葬転移しといた。倒れたら見た感じただの木でしかないんだけど、魔物寄ってきたりする? そこんとこどうなんだろう……後でリーシアさんに聞いてみるか。討伐証明部位、書いてないし。



 それから違和感を感じる度に、ちょいちょいトレントを狩りながら歩いていると、おさーるさーんだよーにエンカウント。だが普通の猿なんているわけがない。


鑑定──


個体名エイプ:魔猿。エイプの中位個体。


──この猿、中位個体なのか。まあ猿といいつつ、デカいし元の世界なら完全にゴリラ寄りだから仕方ないか。手が長く細身なデカいゴリラ──ゴリラ要素はぶっちゃけ顔くらいかもしれない。


 さて、もうまともに戦うことなんか考えません。だからといって油断もしなけど……木刀持ったままエイプの背後へ──と思ったけどエイプ、木の上というか太い枝に尻尾巻き付けてぶら下がってるんだよね。ちょっと、キミ下りて来なさい。


 しかし、本能的な何かで感じ取っているのか、こちらを見てはいるものの、下りてはこないエイプ。えー、こんなこと想定してないんだが……どうしようか。


 まだ触れていないから体内に干渉できないし、俺がどこかに転移するか、何かを転移させるかしかできない……んーこの場合はどっちだろ。


 ポクポクポクポクと考えてチーン。なんて、上手いこと思いつくはずもなく……なんとなくで、エイプが尻尾を巻き付けている太い枝に、別の木の太い枝をT字になるように転移。


なんとなくでやったが、エイプは枝に尻尾を巻き付けたまま串刺しになった。


 巻き付いていた尻尾の力が抜けたからか、ずるっと落ちてきたので血が付かないようにタッチ。まだ少しだけ息があるみたいだけど、気にせずベリッとして臓器に触れて、討伐証明部位の尻尾と魔石回収して埋葬転移。


時間が惜しい、雑だが許せエイプ。



 それからまた探索。まだ見ぬ魔物を求めて、途中で出てくるエイプ狩りつつ森を練り歩く。


 エイプを五体くらい狩った辺りで、エイプ三体合体した、くらいのエイプにエンカウント。何言ってるか分からないと思うが俺も分からない。とにかくドデカいエイプ。


 でも察することはできるので、周りの普通サイズなエイプ含めて、一斉に魔石転移。


それから鑑定──


個体名エイプキング:エイプの上位個体。周囲の群れの王。


──やっぱりな。まあそれしか考えられない見た目してる。大きさは全然違うけど。


 あと今気付いたけど、鑑定で何々の何々個体と出る時と、ただ何々個体って出る時がある。後者はその魔物の、上も下もいないってことでいいのかな? 取り合えずそういう認識でいようかな。


 あ、そういえばワームやカマキリは虫だし論外として……エイプ、猿って食べれるのかな? んー、でも見た感じ食欲湧かないから今回はスルーでいいか。尻尾と魔石だけ回収して埋葬転移した。



 そして探索再開。再び森を練り歩くこと、10分くらいで遂に出会った! エンダーイヤーって流れそうなくらい嬉しいエンカウント。


確認のため鑑定──


個体名オーク:魔豚。オークの中位個体。


──だよね! 見た目からしてそんな感じ。やっと会えたなオーク! なんならお前を探していたまであるぞ。今までの魔物は前菜だ、食べてないけど。


《オークを見てそんなに目を輝かせるのもシズヤくらいよね……》

苦笑気味の女神さま。


 仕方ないです。あの美味しさを知ってしまったら、もう美味しいお肉にしか見えない!


出会ってしまったせいで、空腹感を覚えてしまったのでサクッといきますよ。


まずは背後に転移。隙を作ってタッチ。魔石転移でいっちょ上がり!



 さながら三分クッキ──いや料理はしてないか。あと多分三分もかかってない。今日のお昼はオーク、キミに決めた!

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