第34話:無双のお時間休憩終了です。

「あはは……すいません」

苦笑するしかない。


「あの、納品袋の中を確認しても?」

と聞かれたが特に問題ないので


「どうぞ」

と許可を出す。


俺から許可をもらったリーシアさんは、袋に近付き中をあらためる。


「わ、凄い……ウェアウルフキングを含めて、下位だけではなく中位も上位も、こんな短時間で……」

こんなの、Sランク冒険者でも人によって単独では……パーティならともかく……と、何やらもそもそ呟きながら、袋の中を見るリーシアさん。


 それをお茶を飲みながら待ってる俺。短時間って言うけどそんなにかな? 体感では二、三時間ほどだろうか? 長く見積もっても、四時間はいかないくらいだと思う。実際はどれくらいか知らないが、昼の鐘はまだ鳴っていない。



 そして、確認し始めてから多分一時間くらい経った辺りで、数え終わったリーシアさんに声をかけられた。


「数え終わりました。下位の魔石が一六二個で中位の魔石が二九個、上位の魔石が三個でゴブリンの耳が一三九個、ウルフ本体が五体にウェアウルフキングが一体です。」

念のため、ギルドカードの方も確認しますが正直、信じられない数です。とリーシアさん。


 変な称号付きそうな数だった。こんなにいらないか、と途中処分しているからかウルフはそんなもんか。まあ毛皮だけならもっと持ってこれたかもだけど……。


《よかったわね。この世界には、大まかな称号しかないし称号に力は無いわ。あったら、シズヤは今日だけでゴブリンスレイヤーとか、ウルフスレイヤーとか付いていたわね》

クスクス笑いながら、まだ狩るでしょう? と楽しそうな女神さま。


あ、無いんですね! よかった……。その称号は正直いらない。


「俺は普通に戦闘しているわけではないので……」

だからこそできることで、存在意義みたいなものです。とカードを渡しながら俺。


そのために召喚された勇者だし、ね。


 そういや持ってるカードに、討伐記録が残るんだったな。本名シズヤのカードは自室に置いてきたから、帰ったら見比べてみようかな?


「……私は正直、勇者と言われてもピンとはきていませんでした。けど、こうして結果を出されると信じざるを得ません。勇者って凄いんですね……」

カードを受け取り確認しながら感慨深そうに言うリーシアさん。


 やめてください。なんか恥ずかしいです! 思わず顔を背ける俺。褒められることに慣れてませんっ


「冒険者ランクは、一番下が〖Eランク〗から始まり実績をつむことで、〖Dランク〗〖Cランク〗〖Bランク〗〖Aランク〗そして最高ランクの〖Sランク〗へと上がっていきます。今シズヤさんの方は、登録したてのEランクで、ラルフさんの方で活動するとのことでしたので、こちらはAランクです。実力も分からないのに、勇者だからというだけで、最初からSランクは流石に……ということでAでしたが、Sにしますか? 可能な実績ですよ。」

初回の納品でこれだけの数だと十分です! と少し興奮気味のリーシアさん。餅ついてください。


 冒険者ランクって一番下がEで、アルファベット順にAまで上がって、一番上はSになるのか。そういや、リオラに丸投げで作ってもらったから、そういった説明聞いてないんだよな……まあ今聞けたしいいか。


 もらった時はよく分からなかったが、実績をつむ気がないシズヤのカードが一番下のEで、活動するラルフのカードがAなのは、依頼を受ける上でもしがらみが少なそうでありがたい。


 それでも、初っ端からSランクでいきなり何でもかんでも、任されたらたまったもんじゃないしな。正しい判断だと思います。


 んー、しかし最高ランクにか……現在いるSランクの人数次第かな、希少で目立つようなら遠慮したい。


「現在Sランク冒険者って、何人くらいいるんですか?」


「この、冒険者ギルドロズレット王国本部で、登録しているSランクは現在十一人いますよ。勇者がいた国なので、他国よりも多いはずです……勇者に憧れて、強くなろうとする人が多いですからね。」


「……それって、誰がSランクとか名前が知れ渡ってたりしますか?」


リーシアさんは、そうですねえ……と考えてから名前を教えてくれた。


〖剣豪ライズ〗

〖才媛のガネット〗

〖風使いのシュトル〗

〖投擲駆使のソネア〗

〖先導の大剣使いザッガス〗

〖剛腕のゴウゼン〗

〖援護治癒師ヴィネ〗

〖槍術士ローマン〗

〖風撃射手のフェリス〗

〖地割りのヴェスタム〗

〖瞬撃のセネディア〗


の男六人、女五人が現在のSランク冒険者らしい。


二つ名、通り名? があるのか……やだ、俺そういうの絶対いらない!


「一般の方までは分かりませんが、冒険者なら知ってる人は多いと思いますよ。目指すべき目標の人たちですからね。」


 あーこれは無し。絶対目立つし、知らない人に名前を覚えられるとか、面倒ごとが増える気配しかしない。


「俺は今のままでいいです。」

寧ろ今のままがいいです。


「そうですか……」

少し残念そうなリーシアさん。なんで?


「あ、あと今更なんですが……敬語じゃなくて大丈夫です。実力はともかく、見た目は完全に初心者の俺に、受付嬢長のリーシアさんが敬語とか、怪しさしかないと思うので……敬称も『くん』でお願いします。」

俺にさん付けで敬語とか、正直違和感しかない。


ホントに今更感あるけど、いい機会だから言わせてもらおう。実は毎度むず痒い。


「私は今まで、受付嬢長としてまとめていたので、担当を持ったことがないです。なので、そこを怪しむ人は特に受付嬢では、絶対いると思いますが……分かりました。いえ、分かったわラルフくん」

これでいいかしら? とリーシアさん。


「はい。それで大丈夫です。」

心做こころなしか話しやすい気がする。いい感じ。


「ではラルフくん。また出る? それなら、こちらで今あるものを先に査定はするけど、金額決定はせずに追加を待つわ。」

どうする? とリーシアさん。


「はい。もう一度戻って、あとで追加を持ってきますのでそれでお願いします。」


俺の無双タイムはまだ続きます。


「分かったわ。」

にこっとリーシアさん。


そうだ、忘れてはいけないことも言っとこう。


「あと、そろそろリーシアさんに円滑に、繋いでもらえると助かるのですが……」


毎回、戸惑われたり困惑されて、確認しますって待たされて正直怠だるい。


「あー……そうね。公表したら逆に目立つし、私と近しい子には言ってるのだけどなかなかね……。あ、そうだ! 受付に高確率でナタリアって子がいるのだけど、その子に言ってくれれば、直ぐ私に繋いでくれると思うわ!」

その子にも言ってあるから。とリーシアさん。


名前だけ言われても……何かほら


「その方の特徴とか、教えてもらってもいいですか?」

じゃないと、また話しかけて名前聞いて、どうして? ってなって意味がない。


「そうね……綺麗な子よ?」


んん゛……


「受付嬢しているお姉さんは、基本綺麗なので別の特徴でお願いします。」

曖昧すぎるわい。つい真顔で言ってしまった。


「え……あ、う……」

何故か頬を染めて照れてるリーシアさん。


 なんでだよ……受付嬢って、綺麗どころがやるからこそ意味があるんだろうし、必然的に美人が揃うだろうが……。


何を照れていらっしゃる? 言われ慣れてるだろうに。


《……》

あ、また女神さまから呆れの気配が! なんでですか!? 女心難しい。


少ししてコホンと場を改めるリーシアさん。


「……あの子は白羊獣人オケヴィス。白髪に色白でなんていうか、全体的に白くて綺麗な子がいたら、その子がナタリアよ。」


ふむ……白いお姉さん……


《オケヴィスは白い羊獣人よ》

お! ありがたい情報です女神さま。


 えーと、ナタリアさんは白い羊のお姉さん。で覚えておこう。リーシアさんに円滑に繋いでくれる人なら、覚えておくべきだよな。


「分かりました。では戻ってきたら、その人に声をかけて呼んでもらいますね。」


「ええ、お願いね」

再び、にこっとリーシアさん。


 そして話が終わった後に、もう一つ納品袋の大を売ってもらい、そこから転移で移動しようとしたが、入るところを不特定多数に見られていることを思い出したので大人しく徒歩で出た。



出てから路地裏に行って再び森へ転移。もちろん進んでいたところまで戻った。



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