第21話:約束
「あ、待って。『副委員長』って呼んでるように、うちらも何かで呼んでるんじゃない?」
勘づくαちぃ。
「あり得るね、それ……」
同意する親友さん。
「……」
黙る俺。
勘のいい女は嫌われますよ! この世には知らない方がいいこともあるのだよ?
《観念なさい》
女神さま!?
「ねえ、私たちのこと……なんて呼んでる?」
呼ばれたことはないけど、多分あだ名みたいなの付けてるよね? と親友さん。
「……」
黙秘権を行使する俺。
「まずは私」
と親友さん。
「……親友さん」
眼力というか、圧に耐えられませんでしたっ!
「親友さん? なんで?」
「……副委員長の親友っぽかったから」
「なるほど……」
納得したらしい親友さん。
「うちは流石に覚えてるよね? さっきだし」
ええい、もうヤケクソじゃ!
「……αちぃ」
「ねえ、さっきだよ? なんでそんな感じになったの!?」
「……副委員長と親友さんとプラスαの一人だから」
「……混ざってそうなったと?」
「長いから略した」
フルネーム覚えるなんて無理ぽ。
「……」
黙ったのでαちぃのターン終了。
「じゃあ、あたしは〜?」
君こそ分からんが?
「……俺の服を選んだ女子」
「あ〜確かに?」
「……」
「
えー、じゃあ──
「……」
「今なんて略した〜?」
……。
「……α雛」
「ん〜まあいいかな〜」
許された。
「ほら、
「私は別に……」
親友さんに連れて来られた女子。αの最後の一人。この女子は別に呼んで欲しくなさそうだからよくないか?
「親友さん、無理矢理は感心しない」
注意する俺。
「私は
確かに親友だけど名前あるの! と親友さん。貴女はもう既に固定ですよ?
「……」
なんて、も何も知らないのだが? 知ってるていでくるのやめてほしい。
偶にいるよね、目が合ったり一度話したらみんな友達な奴。あれ無理な人からしたら誰おまだからな?
「……
黙った俺を見て自己紹介してきたα最後の女子。なんで?
「……」
不思議な名前だ……否定はしないが、親御さんはどうしてそうしたのか、少しだけ気にならなくもない。
「なんて略した〜?」
聞いてきたのはα雛。
「……ラストα」
α最後の一人だし。
「ダメ〜」
却下された。
「……αサクサク」
「略なのに長くない〜?」
また却下するα雛。もう適当なだけです。
「人の名前で遊ばないでほしいんだけど」
ごもっとも。
でもここまで来て一人だけ無しは仲間はずれみたいで申し訳ないので──
「──……α咲」
「……なんでもいいわ」
分かる、俺も。
これでいいらしいのでα咲に決定。
……いやそもそも、途中付けさせられた感があるが呼ばないだろう。無駄な時間すぎる。
「それにしても……應地君って結構、他人に興味ないよね」
そりゃそうですよ親友さん。
他人に興味津々とか気持ち悪いだろう。言わないけど。
「でもね〜應地君。雪ちゃんは、あっちでは話しかける勇気すらなかったのに〜いつ死ぬか分からない世界に来て、勇気とか言ってる場合じゃない〜ってモードだから〜これから遠慮なく、お話ししに行くと思うよ? それって嫌〜?」
「ちょっ 雛乃!?」
慌てた声を出す副委員長。
よく分からないが、副委員長が俺に話しかけることが、嫌かってことか?
「……別に」
良いとも嫌とも思わない。
《好きの反対は嫌いじゃなくて無関心、よく言ったものだわ……》
女神さまが何か言ってる。
「いきなり告白するのは変だし、せめて仲良くなってからじゃないと、変な子って思われるのが怖い〜って子だから、興味持っても気持ち悪く思わないであげて〜?」
「待って待って雛乃? ストップ! なんか色々ダメだからっ!」
更に慌ててついには席を立つ副委員長。
なんだかよく分からないが賑やかな人達だな。
「ちっ違うからね! あ、いや違わないけど、その……わ、私すすすすす好きとかっ──」
もごもごごちゃごちゃ言ってる副委員長。
α雛のところに行った副委員長が戻ってきたと思ったらなんだか……
「……副委員長は故障中か何か?」
「ある意味そうかも……」
親友さんから見ても、そういう見解になるらしいのでそっとしておこう。
そこで高い音の鐘が聞こえ部屋に響いた。これが例の魔道具か……。
タイミング的に丁度いいので、このまま
「俺はそろそろ自室に戻るよ。この部屋を誰に知られてるか分からないけど、ここから俺が出ていくのを誰かに見られたら面倒だから。」
面倒しかないよね。女子複数に男は俺一人……しかもその中には、大人気な副委員長。うわ、ゾワッとする。
「そうだね。食堂に行かなきゃだけど、一緒に行くのはまずいと思うしここらで解散しよっか」
物分かりがいい親友さん。
同意する他の女子。
「應地君……また、ね?」
念を押すように言う副委員長。
「……うん。じゃあお邪魔しました。」
なんだかんだ副委員長を名前で呼ぶ件は流れたのが今回のMVPかな。
◆───────◆───────◆
俺はαちぃの部屋を出てから周りを確認して転移で自室へ戻った。
◆───────◆───────◆
やっと
取り敢えず、俺も委員長に学校の件の返事をするために食堂行かないとな。
◆───────◆───────◆
やってきました食堂! いやもうテンションは上がらんな。
中に入り、直ぐに委員長を探して近付く。俺は委員長への返事のためだけに、ここにいるからな。さっさと済ませて帰りましょう。
「あ、應地君」
俺に気付いた委員長。
「ども。返事をしにきた。」
「それだけ言われると僕が告白したみたいだね」
あははと委員長。
冗談でも止めてほしい。
「学校の件。俺は辞退することにした。」
「……そっか。分かったよ。」
「あと、金の件だけどメモ助かった。ありがとう」
感謝は忘れず伝える主義です。
「ああ、うん。どういたしまして。」
役に立ったならよかった、と委員長。
ホント人間ができてらっしゃる……。
「じゃあ、それだけだから。」
「うん。でも、もし気が変わったら──」
「無い。委員長は頑張ってくれ」
委員長が言いたいことは分かるが俺がシズヤとして通うことはない。
俺はそれだけ言って面倒が来ないうちに食堂を出た。
◆───────◆───────◆
無事自室へ戻った。さてこれからどうしようか……もうすぐ昼。しかし俺は食堂を出た。なぜなら俺は極力中崎に会わないように、これからは別で食べようと思うからだ。
王都で食べるか、ここに運んでもらうかすることにした。
昼飯が終わったらクラスメイト達は訓練か……騎士団による訓練だし、確実に今よりも魔法の使い方が上手くなるだろう。
俺もぼちぼち検証しなきゃな……そうだ! 訓練でクラスメイト達が城の中に居ないのならば、少しくらい出歩いてもエンカはしないはず……なら今度の検証はあれにするか。
思い立ったが吉日。
早速ロイルさんにコール。
『はい』
直ぐに出てくれたロイルさん。
「お忙しい中すいません。適正魔法の検証をしたいと思ったのですが今回の検証にはロイルさんの許可が必要だと判断しました。」
『……何をなさるおつもりですか?』
あれ? 怪しまれてる?
「えっと、今更なので包み隠さず言ってしまいますと、〖目に見えていない場所への転移で行ったことがあっても無くても可能なのか〗と〖誰かと一緒に転移できるのか〗を試したいです。」
警告で少しだけ知っているが、実際試してみる価値はある。
『……なるほど。それで私に何の許可を取ろうと?』
「後者をロイルさんで検証させてもらえないかと思いまして」
『……私がこの国からいなくなると、多くの問題が発生しますが、責任はどうなさるおつもりでしょう?』
ん? 何か勘違いしてる?
「大丈夫です。城の中で検証するので遠くへ行くことになるわけじゃないですよ?」
『……さようでございますか』
歯切れの悪いロイルさん。体調でも悪いのかな?
「それで本日の昼食後、クラスメイト達が城にいない時に、試したいと思っているのですが、ロイルさんお時間いただけませんか?」
少しの沈黙。やっぱり忙しいかな?
『おい、シズヤ』
なんとロイルさん直通コールキューブから国王さまの声。
王様の側にいるのが宰相だし、当たり前だけど近くで話を聞いていたらしい。
「こんにちは国王さま。」
『うむ。ロイルを貸すのはいいが……その検証とやら、命の補償はあるのだろうな?』
貸すって国王さま……。
「大丈夫ですよ。まだ人間では試せていませんが、物で欠損部位を出さずに成功していますから」
『うむ……ではシズヤ、
相当心配なんだな。まあ宰相って身分だし当たり前か。
「分かりました。約束します」
俺のイメージ次第だし大丈夫だと思う。
『だそうだぞ、ロイルよ』
『陛下に従います。』
『では他の召喚者が訓練場に移り次第向かえ』
『陛下の
そして通信が切れた。
なんか凄い異世界感があったな……。まあ、取り敢えず協力してくれるようで安心した。それにしても、今日はよく約束する日だな。
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