第6話:森が多過ぎて草。いや笑えない

作者です。ここまで読んでいただきありがとうございます。

5話分強調したので、もういい加減強調せんでもいいかなって単語の強調記号(〖〗【】〈〉)は外します。新たに強調するものも一度強調したら外します。それでは引き続きお楽しみいただけたら幸いです。

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「うむ……伝承や文献を見ると、女神様と〖無闇に勇者召喚を行わないよう約束させられた〗とあってな……なんでも何も問題が無い時に召喚しようとしたら〖天罰〗があったらしいのだ。」

それを踏まえてな……と渋い顔のままの国王さま。


「天罰……」

それはあの女神さまが……?後で聞いてみよう。


「だから今回このようにギリギリになったのだよ。天罰の対象にならない状況がどの程度のものかも分からんしな……それに〖勇者召喚で召喚される勇者は異世界からの強制拉致に等しい〗とも書いてあってな……気軽にするべきではないと王家には伝わっておるよ。」

すまんな、と胃の辺りを抑える国王さま。胃痛ですか?


 書いてあったから俺たちの現状を理解していたのか……。そして無責任なことにならないようにそれなりの覚悟を持って召喚したってことか。余計なおまけがついてきた理由は分からないが……あれだけの人数を誤召喚って国王さまの胃は無事だろうか?


「分かりました。では、今回召喚したのはギリギリとのことですが……現在の詳しい状況と、俺に何を望んでいるのかを聞かせてください。その代わりと言ってはなんですが、俺からいくつかお願いしたいことがあります。」

真剣な顔をして言い切る俺。


 ここはもう変に隠したり逃げずに、協力関係を築いておいた方がいいと判断した。俺一人でできることなんてたかが知れているし、協力を得ることによって動きやすくもなるしこちらもWIN-WINな関係になれるだろう。


 俺の話を聞いた国王さまは、よかろう。と言って再びロイルさんに目配せ。ロイルさんは準備してまいります。と部屋を出ていき体感一時間くらいで大量の紙の束と共に戻ってきた──のだが


その間、俺は国王さまとティータイム。


 どうだったかって?無言でお通夜のようでしたよ……一応腹の探り合い中だからね、仕方ない。でも紅茶は美味しいよ。実は三杯目です。三杯目の際にメイドさんポットを置いていってくれた。飲み放題! 緊張でまだ自由に動けないのだけど……。


 この間に女神さまオンにしようかとも思ったけどロイルさんすぐ戻るかもしれないと思ってやめた。



「お待たせいたしました。」

会いたかったよロイルさん。


 兵がいるから国王さまと二人きりではないのだけど、発言は許されていないだろうし、防音魔道具で聞こえていないだろうしで全員無言なので本当に気まずかった……。


 この短時間で打ち解けられるほど俺にコミュ力はありませんよ。あったら中崎に隠キャなんて呼ばれないだろうしね。


ロイルさんはテーブルの上に一番大きい紙を開いた。多分地図。


しかし何か違和感がある地図だな……?。


「まずはそうですね……ここがこの国〖ロズレット王国〗です。そして西の隣国が〖ヴァンス王国〗東の隣国が〖サンゼスト帝国〗です。」

分かりやすいように地図を指差しながら説明してくれるロイルさん。


 パッと見た感じだと国と国の間には必ず大きな森があるみたいで……いや、森多くないですか?


 被害があるって言ってたし、多分この森付近だったり森の中に小さな村や町はあるのだろう。ちゃんと切り開いてからにしようよ……。そして新たな国名が出てきた。


「西のヴァンス王国の国王は陛下と旧知の仲ですので問題ありませんが、東のサンゼスト帝国はあまり友好関係にあるとは言えない間柄ですので、近付かない方が無難かと思われます。」

身の安全は保証できません。と真面目な顔で言うロイルさん。


サンゼストは要注意ってことですね。


「ヴァンス王国の王レグラット・ラ・オズ・ヴァンスは俺の学生時代からの親友でな、子供達の婚約も済ませ国同士も友好関係を築いておる。」

懐かしむように言う国王さま。幼馴染的なものなのかな? あとまた新たな人名、覚えなくても問題ないと思うし覚えないけど。


「そして問題の魔物ですが……どうやらこの周辺の森全体で増え続けている状況でございます。」

ちょっと待ってロイルさん。この森全部……?


「え、あの見方が間違ってたらすいません。俺が見た感じ、ほぼ地図を占めているのは森なのですが……」


 これは現在のものです? 一〇〇年前の地図を間違えて持ってきたとかないですか? それともここって隔離された大きな島かなんかだったりします?


「それ故、勇者召喚を行ったのでございます。」

言外に俺の嫌な予感が的中していることを知らせてくるロイルさん。


「……」

言葉を無くす俺。



女神さまオン。


《ちょっとシズヤ!! オフって何よ! それきり何を話しかけても全く聞こえていないみたいだし、ずっと無視されていた私の気持ちが分かる!? 私、女神なのに! 女神なのに! はい、言って私の名前!》

もう! もう! と女神さま。


 もうね、ブチギレてらっしゃるね女神さま。ごめんて。後で聞く時間取るから、今は俺の話を聞いてほしい。


キィーっ! って言ってる女神さまと緊急会議(強制)開始。


《女神さまはこの状況知っていたんですか?》


 女神さまの声はオフってたから俺には聞こえていなかったけど、多分こちらの話は全部聞いて見ていたんだろうから把握しているのか聞いてみる。


《…………そうね。だからできたのよ。詳しくは言えないけど、昔しちゃった〖約束〗で無闇矢鱈に勇者召喚ができないように条件をつけてあるの。それでも召喚できたということは、そういうことよ。》

渋々という感じで話してくれる女神さま。


文句なら後でいくらでも聞くので今はすいません。


「──?」


《なるほど……そういえば天罰があったって言ってましたがあれは?》


 忘れていたが思い出したので聞いてみる。人名でなければ物覚えはいい方だと思う……多分。


《それが条件をつけた結果よ。拉致みたいなものと分かっていて簡単に召喚させるわけにはいかないもの。》

天罰は自動プログラムだから私が執行したわけじゃないけどね。と女神さま。


自動プログラムなんだ……。


《では森の件ですが、召喚できた=条件を満たす大変な状況。ということなんですね。ちなみに、女神さまは魔物が増えている原因とか分かったりしないんですか?》

こう、天界から下界を監視していたりするんじゃ?


《分からないわ。私にも誓約があってね、の。じゃないと何でもかんでも神頼みになって下界の者が怠けてしまうでしょう?だからシズヤの周辺ならまだしもシズヤが知らない行ってないところまで干渉することはできないわ。この世界を見れるようになったのもシズヤが来てからだし。》

私が知ってるのは一〇〇年前までで今は色々変わっているだろうしね。と女神さま。


「──ヤ」


《ではどの道、俺が調べないと何も始まらないわけですね……》


そのための勇者召喚だし仕方ないか、と自分を納得させる。


「シズヤ!」


「へぁいっ!?」


 びっくりしたびっくりしたびっくりした!だから俺はそんなに器用じゃないんだってば! 女神さまオフ!


《あちょっ──》


「どうしたのだ、黙ったと思ったら声をかけても反応せんで」

石化のようだったぞ。と国王さま。


女神さまと話していました──


──とは言えないのでなんとかそれっぽく誤魔化す。


「これからのことを考えていました。召喚の間でも話しかけられているのに気付かず怒られたりしたのですが、俺って考え込むと周りの声が聞こえなくなるタイプなもので……すいません。」

気を付けます。と謝る俺。


「ふむ。で、何か思いついたのか?」


 早速聞いてきた国王さま。まあそうなりますよねー……んー、取り敢えず魔物を間引かないといけないってことだからな、うん。


「えっとですね、本来は魔物の討伐って冒険者ギルドが冒険者たちに斡旋してるんですよね?」


丁度いいのでさっき聞いたことを活かしましょう。


「そうだ。通常、魔物の討伐はクエストとして冒険者たちに依頼の形をとることから始まる。」

でないと報酬は出せないからな。と国王さま。ならば……


「そこにポッと出の得体が知れない俺が出ていくのはあちらもいい顔しないでしょうから……まず、ギルドの一番偉い人に話を通しておいていただきたいな、と」


俺のお願い? 提案? を聞いてロイルさんと国王さまは顔を見合わせた。


「なるほど。一理あるな……彼奴らの仕事を奪うようなものだしな。よしロイル、センチルを呼べ。居たらファリオレもだ。」


奪うようなもの……お手伝い感覚なんだけどな、俺は。


 呼べ、と言われたロイルさんは畏まりました。と言ってまた部屋を出ていった……新たな人名が出たし誰か呼ぶみたいだ。話の流れからするとギルドのお偉いさんかな?


「──ところで」


 というかまた二人になってしまった! しかし再びお通夜タイムかと思ったら国王さまから話しかけてきた。おお?


「シズヤ。お前、共に来た召喚者の一人と折り合いが悪いらしいな」

何故かニヤリと笑う国王さま。


 ロイルさんから聞いたんです? それとも“影”ってやつですか? 隠密部隊みたいな……


「え、ええ……理由は分かりませんが、何故かもの凄く嫌われているようです。」

今日初めてまともに会話したのですが……と俺。


「フッ お前くらいの歳なら女がらみではないのか?」

眉毛をクイッと上げて、どうだ? ん? といきなり下世話な国王さま。


まあドンピシャですけどね。


 取り敢えず隠すことでもないので例の中崎との事のあらましを説明してみた。国王さまにする話じゃないと思うけど……話をふったのは国王さまだし。


中崎の件を聞いた国王さまは、ふむ……と言って


「なるほどな。しかし関係を終わらせたのであれば何故、そのナカザキとやらはまだお前に絡むのだ?」

心底不思議そうな国王さま。


「さあ?」

首を傾げる俺。


だからそれは俺も知りたいです。


 そのうち分かりそうだけど、分かりたくない気もするので……取り敢えずその時まで放置でいいかなって思ってる。


そこでタイミングよく扉がノックされた。


 なんだかんだ話していたようで、ロイルさんご帰還だ。呼べと言われていた人たちを連れてきたっぽい。ロイルさん以外にも男女が二人、入ってきた。



 今思ったけど俺の正体? を知る人は少人数でお願いしたいな……。個人情報の取り扱いが少し不安な俺です。




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