第49話 いつまでもあると思うなフリーの女
「もしもし、ちょっといいかな~?」
瑠汰が帰ってこない事や、様々なショックから俺は机に突っ伏していた。
すると頭を突かれる。
顔を上げると、言葉の軽さとは異なって真面目な表情の与田さんがいた。
「話せます?」
「あ、あぁ……」
「しっかりしろ」
机を思いっきり叩かれ、頭が少しはっきりする。
「ごめん。で、話って?」
「瑠汰ちんのこと」
「……」
当たり前だよな。
さっき渡辺君に反応していたし、彼女は色々知っているのだろう。
またも俺だけハブられている。
いつもこれだ。
結局情報はぼっちの元に回ってこない。
「まず告白した磯谷だけど、知ってる?」
「……いや、知らない」
「本当に三咲君って高校生活に無関心だね。まぁいいや。磯谷は元サッカー部の結構ヤバい奴でさ、今回の告白も軽いノリだろうから無視してオッケーだよ」
「……おう」
話を聞くと、磯谷と言う奴はかなり酷い噂だらけらしい。
タバコや酒は当然、女子中学生と致したり、歳上の女性と関係を持ったり……まぁ結構遊んでいるようだ。
この学校にも元カノ多数。与田さんも告白されたことがあると。
優等生だらけのうちの高校には珍しいタイプだ。
「で、その素行の悪さのせいで強制退部。何がタチ悪いって、あいつイケメンなんだよね~」
「そうか。そんなヤバい奴だから瑠汰は振ったのか」
「それは違うよ」
「え?」
何故か断言され、変な声が出る。
まるで瑠汰が告白を断った理由を知っているかのような口ぶりだった。
「はぁ、それはまぁいいや」
「気になるんだけど」
「本人に聞きなよ。私だって正確に知ってるわけじゃなくて、推察に過ぎないし。それとも何? そんなことも聞けない?」
「聞けるよ」
若干煽られ、むきになって答えてしまった。
そんな俺の反応に与田さんは吹き出す。
「まぁこの学校のほとんどの人が気づいてるけど、三咲君は瑠汰ちんのこと好きなわけでしょ?」
「ッ!? ほとんど気づいてる!?」
「そりゃもう。まぁ三咲君より向こうの方がアレだから……ってまぁそれはさておき」
さっきから変なところで話をぼかされる。
向こうってなんだよ。
気になって仕方がない。
「本来瑠汰ちんはめっちゃ可愛いし、この前の文化祭で知名度も増した。告白される条件なんて揃いまくってるの。でも、つい昨日まで誰も告白しなかったのはなんでかわかりますか?」
「……あいつがコミュ障だから?」
「ぶっぶーざんねーん。馬鹿だねー三咲君は」
「……じゃあ正解はなんだよ」
「三咲君がいるからだよ。三咲君が瑠汰ちんにメロメロなのがみんなわかってるから、わざわざ邪魔しようとしなかったってわけ。磯谷は頭のねじが一本もない系だからしゃーないけど」
なんだろう。
物凄く恥ずかしい。
俺が必死に抑えてると思っていた瑠汰への好意が、ほとんどの生徒にバレていたってことだろ?
え、嘘じゃん。
「何にそんなショック受けてんの?」
「俺の片想いが、純情が全生徒に知られていたこと」
「全生徒じゃないよ。一人だけ知らない女の子もいるからね~」
またも意味深な事を言われるが、俺はもう考えるのをやめた。
と、そんな俺に与田さんは言う。
「マジな話、好きならもうそろそろ気持ちを伝えた方がいいよ。二人の関係のためにも、そして他の男への牽制のためにも、ね。今回の件でこれから他の男子も言い寄って来ちゃうかもしれないからさ」
「お、おう」
「いつまでもあると思うなフリーの女」
「格言っぽいな」
「でしょ? 今三秒で考えた」
にししと笑う与田さん。
「で、今回の告白は当の磯谷が振られたことを笑い話として言い回ってるからみんな知ってるだけ。さっきの修斗もまさか三咲君がそのこと知らないと思ってなかったから言ったんだろうね」
「やっぱぼっちって大変だな」
「いやいや、ぼっちじゃないでしょ。私もいるし、この前のグループメンバーはみんな友達じゃん。それに大好きな瑠汰ちんもいるわけですし……」
そういえば週末瑠汰に卑屈になるなって言われたんだっけか。
それを思い出し、俺は精一杯作り笑顔を浮かべて言ってみた。
「そうだな。友達いっぱいだぜ!」
「……それは違うけど」
「……」
やはり何かを間違えているらしい。
「じゃ、一緒にいて勘違いされても嫌だからばいばい」
「勘違い?」
「鈍いとこ、一線を越えたら死ぬほどウザいから気をつけなよ」
「……」
恐ろしいお言葉を授かり、俺は震えた。
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