第45話 生意気な碧眼巨乳
しばらく待っていると、二人が風呂から出てきた。
お互い部屋着に着替えており、若干湿った髪が艶やかだ。
ご満悦な瑠汰に対し、若干テンションの低い萌夏。
何かあったのだろうか。
「鋭登も入ってきて良いぞ。あ、使い方わかるよな?」
「まぁ多分」
「変なことしないでね」
「変な事ってなんだよ」
ジト目で言ってくる妹。
と、瑠汰はその発言に萌夏の肩を揺さぶる。
心配しなくても何にもしねえよ。
とは思いつつ、実際さっきまで二人の女子高生が浸かっていた湯に入ると、頭がおかしくなりそうだった。
今後女子の家に泊まる機会なんて恐らくないだろうが、可能なら風呂は済ませて来ようと思った。
◇
風呂を出ると、萌夏と瑠汰は椅子に座ってモニターを向いていた。
「は? 今の崖上がる方法あった?」
「自分からライン下げるからそうなるんだよな~」
「チッ……うわ、またクソキモコンボきたし」
「きもちぇぇぇぇ」
「ッ! ガチウザい」
どうやらゲームをしていたらしい。
うちにもある有名な対戦格闘ゲームのタイマン勝負が、妹と元カノによって行われていた。
文字に起こすとだいぶ意味不明な状況だが、事実なので仕方がない。
それにしても、乱闘が売りのゲームでタイマンとは。
ガチゲーマーに遊び要素はいらないって事だろうか。
「はい、アタシの勝ち~。萌夏ちゃん弱すぎるんだが? これでVIPってま?」
「……う、うぅ」
「あれれどしたのかな? 言葉が出てないよ萌夏ちゃん。学校でのアタシみたいだぞ」
どんな煽り方だよ。
苦笑していると、萌夏が振り返ってくる。
「殺せ」
「え?」
「このクソウザい生意気な碧眼巨乳を殺せ」
「……」
よく見ると瑠汰はコンタクトを外していた。
そして萌夏も眼鏡姿である。
妹の表情は怒りに染まっており、若干涙が溜まっている。
知らぬうちにどれだけぼこぼこにされたのか。
このゲームの実力は妹より俺の方に若干分がある。
と言っても、十回対戦すれば七勝三敗くらいだろうってくらいで、あまり実力差はない。
ふざけた話で、俺達双子はゲームの実力が全てにおいてほぼ同等なのだ。
萌夏と交代で椅子に座ると、俺は言う。
「あんなに煽ると後で何されるかわからないぞ?」
「向こうから言ってきたんだが? 『私このゲームなら負けない。生意気な巨乳をわからせる』って」
「……」
なるほど。
さっきのローテンションの正体はそれか。
確かにむき出しのそれを見せつけられたら悲しくもなるわな。
憐れ、我が妹。
完璧美少女に唯一足りなかったのは胸か。
「早くやって」
「……」
でもな萌夏。
どこかの小説投稿サイトで日間一位を取っていた短編に書いていたぞ。
『おっぱいに大事なのはサイズじゃない。”誰の”おっぱいかが大事なんだ!』ってな。
お前の事が好きな奴には、お前の胸が一番なんだ。サイズじゃない。
「じゃ、やりますか~。対戦よろろ~ん」
「……おう」
ちなみにこのゲームの前作では、こいつと勝負したことが複数回ある。
しかし、その時の成績は惨敗。
そして当然。
「はい3タテ。流石に1ストックくらいとってくれなきゃ話にならないんだが? 三咲兄妹さん」
「「……」」
レベルが違った。
あっという間に溶かされて負けた。
為す術無しという典型の如き負けっぷり。
「勝ってよ!」
「無茶言うな!」
後ろでヤジを飛ばしてくる妹に俺はため息を吐く。
ちなみに使用コントローラーは俺も萌夏も持参してきたやつだ。
コントローラーを持ってくる打ち上げは俺達くらいだろう。
「えへへ。まぁゲームだけは誰にも負けないんだわ」
「も~マジで絶対何かで勝ちたい!」
「お前本当に負けず嫌いだな」
「うるさい!」
かなりむきになっている。
よほどストレスの溜まる負け方をしたんだろうな。
俺も普段なら発狂しかねない負け方をしたが、今は心穏やかだ。
だって好きな子なんだから。
隣でニコニコしながら即死コンボをはめられても、特に痛くはない。
むしろ楽しんでもらえてうれしいくらいだ。
「じゃ、次何のゲームする? 交代でカジュアル回しながらダメージ勝負する?」
「やる! 絶対負けない!」
「……」
珍しく子供みたいに声を上げる妹に、俺は苦笑した。
まるで小学生みたいだ。
いつもは学校で完璧美少女を演じている奴とは思えない姿である。
「あ、PADだっけ? 萌夏ちゃんたち」
「CS勢だからな」
「おっけ。アタシも久々にそっちでやろっかな。操作デバイス変えるくらいが、ちょうどいいハンデだな」
「その油断を後悔させてあげるから」
「えへへ」
打ち上げはまだ続く。
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