第26話 写真撮影
「じゃ、写真撮るか……」
「なんか、改まると恥ずかしいな」
照れ笑いを浮かべる瑠汰は今、ゲーミングチェアに座って制服を着ている。
背後にはごっついPC周辺器具たちが並ぶ。
凄くアレな構図だが、様になるんだからズルい。
見た目ってのは卑怯だ。
俺は与田さんに教えてもらったカメラアプリを起動する。
加工の設定値なんかも、全部昨日設定してもらった。
「うお、これは……すごいな」
「なにが?」
「なんでもない」
加工と聞くと、背景がぐんにゃり曲がったり、顔の大きさや目の大きさが宇宙人みたいになる痛いモノを思い浮かべていたが、それが全てではないらしい。
今カメラ越しに見る瑠汰は肌艶が増して、少し目元がくっきりしている程度。
だがこのぐらいがジャストだ。
『瑠汰ちんは元が可愛いから、あんまり加工かけると逆に変』
与田さんの言葉を思い出す。
貴方の言う通りでした。
今後は先生と呼ばせてもらいます。
「ちょ、ちょっと、ポーズとかどうすればいいんだ?」
「おう……」
俺は少し考える。
ポーズって大事やっぱり大事だよな。
しかし、そこの指示はもらっていないため、よくわからない。
と、悩む俺に瑠汰はニヤニヤしながらベッドに移動した。
バサッという音をさせながら横たわる彼女。
上目遣いに俺を見る。
「どう? こういうの」
「……いや」
絶対に違うだろ。
どこのグラビア写真だ。
と、見えてはいけないものが彼女の眩しい太ももの付け根に見えた。
俺は顔を背ける。
「お前、見えてるって」
「え? なになに~? 赤くなっちゃって~」
「パンツ見えてるって……」
「はぁ? そんなわけなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
そんなわけあるんだよ。
すぐに気づいたらしい瑠汰は体を起こす。
スカートを整えて、咳ばらいを一つ。
「パンツって何の話? 童貞は妄想がキモいんだわ」
「おう」
「……うぅ、相手してくれ。惨めだから」
「……」
無理な話だ。
こんなプライベート空間で好きな子の下着を見て、普通に会話できるわけがない。
既に視界が瑠汰のスカートに固定されてしまっている。
頭も上手く回らない。
「おらぁぁ!」
「なにっ!?」
声を上げて両頬を叩く。
よし、切り替えよう。
ビビリ上がる瑠汰を他所に、俺は考えた。
彼女の良さを最大限に活かせる構図か。
「わからない時は人に聞こう」
「聞くって誰に?」
「……頼りになる奴だ」
俺はメッセージを入力し、返信を待つ。
と、まだ電車内で暇なのか、一瞬で返信があった。
「『シンプルに立ちでダブルピースが至高』らしい」
「誰からのアドバイスなんだそれ?」
「お前が競う相手だ」
「え、萌夏ちゃんに聞いたの?」
「ははは。生憎と友達の少ない俺に頼れる人間はこいつしかいない」
与田さんの連絡先は知らないし、仕方があるまい。
これでしばらくいいように使われたりするかもしれないが我慢しよう。
なんだかんだ頼りになる妹だ。
「じゃ、こんな感じ?」
「うぉぉ」
部屋の壁の前でピースする瑠汰。
可愛い。
この世のものとは思えない綺麗さだ。
普段と違って碧眼なのが最高。
艶やかな黒髪ツインテールに、恥じらいから色白の頬が若干色づく。
そして破壊力抜群の制服巨乳。
これはヤバい。
「は、恥ずかしいから早く撮ってよ……」
「あ、あぁ」
俺は言われてシャッターを切る。
写真を撮り終えた後は、二人でチェックした。
「いい感じだな」
「そうなのか? 自分じゃわかんないよ」
「いや、めちゃくちゃいい」
「そ、そっか……」
「あ……」
付き合ってもないのに可愛い可愛い言い過ぎたかもしれない。
キモいと思われたか。
微妙な反応の瑠汰に申し訳なく感じた。
「……用事済んだし、帰るか」
居座っても気味が悪いため、帰ろうとすると瑠汰が素っ頓狂な声を上げる。
「も、もう帰るの!?」
「え、いや……やることないし」
「まぁそうだけど……」
なんなんだその歯切れが悪い感じは。
『まだ帰って欲しくない、一緒に居たい』と、そう言われているような感覚に陥る。
でもどうなんだろう。
こいつにとって俺は仲の良い友達であることに変わりはないはずだ。
友達が遊びに来ているという状況に、楽しんでいるのかもしれない。
こいつもぼっちだし、レアな機会だろう。
俺も帰りたいわけではないからな。
「じゃあちょっとゲームでもしようぜ」
「そうだな! 何する!?」
すぐに顔を明るくさせる瑠汰に苦笑した。
まるで三年前みたいだと、そう思った。
瑠汰は昔から変わっていないのだと。
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