その3 右柳家一族

・右柳 創輔(ミヤギ そーすけ)

 ゆーすけの父。楽器製造販売流通にはじまり、楽団運営援助、アーティストプロデュースに至るまで、全国民の聴覚を蝸牛管から支配しているといっても過言ではない、最大手音楽関連会社「ミヤギ・クラヴィア」3代目社長。

 ワンマンすぎるやり方に非難の声がないわけではないが、それを凌ぐ成功と実績で応酬。本社ビルに最寄り駅を造らせ、音楽の街として都市改造まで指示。実質、会社をここまで発展させたのはそーすけの手段を問わないえげつない戦略の賜物以外の何物でもない。その裏には、戦う前から競争の座を下りてしまった兄への劣等感コンプレクスが燻っており、戦いたくても戦えなかった兄への闘争心を営業戦略へと昇華させた。

 祖母がドイツ系。飴色レンズの入ったメガネの隙間からのぞく瞳は灰青。癖毛だが細くてほうじ茶を零したような髪。日本人にしては体格も大柄で、眉も濃く顔のパーツがくっきりしている。

 妻は世界的に有名なピアニスト「指輝(ユピテル)の女神」クラディヴァ=エイコ=レヒトシャフェン。息子が二人生まれたのち結婚するが、結局そーすけの一方的な都合で離婚。二男ゆーすけに自らピアノを教え込み天才ピアニスト「天使の妙音」に育て上げることで自社発展に貢献させ、果ては別れた妻や自分を知らない長男に自分の価値を知らしめることに執心した。

 妻エイコの奏でる完璧な音にはなかった不完全さを無名なさはりに見出し、手元に置くために傍目構わず何でもした。

『混濁た一色た』主人公。



・右柳 孝助(ミヤギ こーすけ)

 ゆーすけの叔父。そーすけの兄。息子は二人。

 自分は裏方の仕事に向いていることを早々に悟り、父の会社ミヤギ・クラヴィア後継(次期社長の座)を弟そーすけに譲る。積極的に同人イベントのボランティアスタッフをしながら、若者の創作活動全般の手伝いができないか煩悶。そんな折、同人界カリスマの化身めておに突然すぎる愛の告白を受ける。ちょっと付き合ってみるつもりの軽はずみなオーケイであったが、あれよあれよと言う間に婚約、結婚、妻の出産。持って生まれた最終兵器的な童顔のせいでとても二児のパパには見えない。弟そーすけと並ぶと、百人中百人が彼を弟だと主張する。

 現在は、業界に幅広く顔が利くめておと協力し、創作活動を総合的に支えるWebサイトを立ち上げ、イベント企画・運営・会場提供はじめ、大賞上位者の出版社・レコード会社との取次等精力的に活躍する。激動の人生を辿ったが、初志貫徹し本人は大いに満足。

 息子を道具同然に扱う弟そーすけに苦言を呈し、家族のあり方を説いた。



・右柳 冥緒(ミヤギ めてお)

 ゆーすけの叔母。そーすけの兄嫁。

 大阪出身。PNは冥(めい)セオ。冥府の女帝「ヘレンカイゼリン」として同人BL界に君臨していたが、とあるイベントにてボランティアスタッフをしていたこーすけに一目惚れし、イベント終了後に強引に告白。翌イベントにて電撃的に同人引退兼婚約会見を実施。全腐女子が泣いたと称される暴動やむなしの惜しまれる引退であったが故に今でも根強いシンパがおり、彼女を頂点とするZFR(ゼフラ;語意不明)という組織を立ち上げてしまった。三幹部が右柳家本館にメイドとしてバイト中。

 仲良くなりたい相手に名前を贈るのが趣味。彼女の周りの人間は須らくその恩恵に与っており、名前をもらうと大成するというジンクスも相まって命名は大好評。

 義弟そーすけの傍若無人振りには、夫こーすけと同様気を揉んでおり、甥ゆーすけの健全な育成を見守る監察官として親友のトルコを派遣した。



・右柳 大丞(ミヤギ だいすけ)

 ゆーすけの祖父。そーすけ、こーすけの父。3兄弟の末子。妻は死別。

「ミヤギ・クラヴィア」現会長。前社長。我が息子ながらそーすけのやり方に不満がないわけではないが、少なくとも結果を出している間は好き勝手やらせようと思っている。言って止まる奴ではないので仕方ない。

 行方知れずの次兄せいすけについては、適当な回答を持ち合わせていない。可能なら金輪際触れてほしくない。

―――私たちはそもそも二人だった。いなかったのだ、あんな。汚らわしい悪魔など。

『タイトル未定』執筆構想あり。



・右柳 平丞(ミヤギ へいすけ)

 そーすけ、こーすけの叔父。3兄弟の長男。

 女癖が悪く書類上は未婚だが、愛人が沢山おり、子も孫もいる。

 「二番目? はて、何のことかな?わしの記憶にはないな。そんなことよりお前さん、ひどくわし好みだ。どうかな?わしの愛人にならんか? 遠慮はせんでいいぞ。カネなんぞ、掃いて捨てるほどある」



・右柳 正丞(ミヤギ せいすけ)

 そーすけ、こーすけの叔父。いないことにされた、3兄弟の二男。

 長年行方知れずだったが、ミヤギ・クラヴィアに融資の話を持ちかける。

「ヘイが異常に女好きな理由。そう振舞っとるだけ。ダイがひねくれた理由。構ってもらえんかったさかいに」



・右柳 元介(ミヤギ もとすけ)

 へいすけ、せいすけ、だいすけの父。ゆーすけの曽祖父。ピアノ調律師。妻テレサはドイツ人だが死別。

ミヤギ・クラヴィアの前身を作った、いわば創設者。移動には杖を要するが、いまだ現役。現名誉会長。ゆーすけ伝いで、結佐宅のピアノを引き取りに訪れる。

「というわけです先生。ずいぶんとひどいことをしよるな」



・右柳 狼佑(ミヤギ ろーすけ)(ゆーすけの1歳上)

 ゆーすけの従兄。こーすけ、めておの長男。

 プロ漫画家。成人したら成人向けマンガ家になる予定。いまはキワドイ描写が売りの青年誌で活躍中。

 右柳家本館に勤めるメイドやZFR幹部相手に放送禁止用語(R指定的な意味で)を浴びせる日常だが、ZFR内設定ではろーすけは“受け”扱いされているのが目下最大の悩み。父こーすけの童顔が遺伝したせいもある。



・右柳 令祐(ミヤギ れーすけ)(ゆーすけの1歳下)

 ゆーすけの従弟。こーすけ、めておの二男。

 建築に興味があり、自分でデザインしたコンサートホールで、ゆーすけにリサイタルを開いてもらうのが夢。インドに肩車してもらうのが好き。背が低いので天井の構造を見るのに重宝。兄ろーすけとは基本的に不干渉。

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