その4 ようじの関係者

・東海林 埜凍(ショウジ のると)

 身体的には女だが、精神的には男。性的志向は男性。付けられた名前が気に入らず、幾度となく改名している。祥嗣の漢字も気にらないので勝手に東海林に変えてしまった。本人と仲がいい関係者は、本人の希望で「ショウジ」と呼ぶ。「のると」は北廉てんぎの提案でつけた自称。

 祥嗣りゅうしの子。不治の病を治療するという名目で、生まれた瞬間から研究所に閉じ込められる。インクルゥディング・バイオリティと共存した稀有な症例。

 主治医のとしあきとの子を身ごもり、妊娠中は「艮蔵いおら」と名を変え朔世てんぎの元で身を潜めるも、出産してすぐに子を置いてどこかへいなくなる。子どもはようじが預かり、「東海林あづま」と名付けた。



・艮蔵 利至明(カタクラ としあき)

 のるとの主治医。としきの父。祥嗣りゅうしにスカウトされ、養育費前借り(出世払いの予定)を条件に、とある研究プロジェクトに携わる。

 妻とはデキ婚なので愛はなかった。学生時代だったので金もなかった。仕方なかった。例えそれが人の道に背いていたとしても。主治医は患者を好きになってはいけない。

 実の父であることを伏せる条件で、あづまを育てる許可を得る。結局あづまにはバレていた。

『CRITICAL FACE』(習作)主人公。



・万里 耀爾(マデノ ヨージ)

 ウキョウの双子の弟。のるとの友だち。

 研究所で、のるとやウキョウと共に暮らす。万里を本当の父親のように慕っていた。

 ある日前触れもなく世界は一変する。ヨージが死んで、ようじが生まれた。後磑ようじとは同一人物であると同時にまったくの別人でもある。友だちと思っていたのるとに裏切られたことで迷いがなくなる。双子の姉ウキョウを助けたい。そのためなら喜んで引き受けよう。共通幻覚――インクルゥディング・バイオリティくらい、なんということもない。



・南泉 雨鏡(マナミ ウキョウ)

 ヨージの双子の姉。南泉ふじとうが父親として宛がわれるが、全身全霊で拒否。男性恐怖症だが、のるとは例外。いままで出会った男とは違うとしあきに正義の味方を思い描く。万里にも次第に打ち解ける。

 彼女はすべてを知って、すべてを黙した。ようじは自分を助けるために死んだ。ならば自分もこの子のために生きよう。禁忌などすでに犯している。私たちはとっくに狂っているのだから。

 『冥鏡官能(めがみかんのう)』(習作)主役。



・朔世 翳冬(サクゼ かげと)

 りゅうしの双子の兄。精神科医。

 りゅうしと共に、とある研究プロジェクトを立ち上げる。外部調整担当なので、ほとんど研究所にはいない。

 共通幻覚――インクルゥディング・バイオリティは、宿主に取り憑くとやがてまったく別のものに姿を変える。

 セクルゥディング・ネクロフィリィ――隠遁する死愛者。私のことだ。



・祥嗣 翏紫(ショウジ りゅうし)

 かげとの双子の弟。心理学者。

 万里しすわ、南泉ふじとう、追って艮蔵としあき、王城まさちかをスカウトし、インクルゥディング・バイオリティの研究をするため、自分たちの子どもを実験台に使う。事実上プロジェクトの最高責任者。

 最終的にその妄執がどのような結果をもたらしたのか。最愛の兄の死を持って思い知ることとなる。



・南泉 一二登(マナミ ふじとう)

 ウキョウの育ての親。心理学者。専門は発達心理学、家族心理学。

 歴史的プロジェクトの一員に迎え入れられたことを鼻にかけ、同期だが圧倒的に年下で若造の万里を顎でこき使う。保身のためなら自分の娘と宛がわれた被検体も平気で差し出す。ウキョウは彼を心底憎んでいた。

 ウキョウの双子の妹サメウに会いたいがため、強引にウキョウに迫る。そうか、彼女こそが――インクルゥディング・バイオリティ。



・万里 司子吾(マデノ しすわ)

 祥嗣りゅうしの学部同期。心理学者。専門は認知心理学、双生児研究、心霊体験研究。ヨージの育ての親。

 山梨出身。学部時代に祥嗣りゅうしに気に入られ、とんでもないプロジェクトに巻き込まれる。ラグビーをやっていたことがあり、ガタイだけは無駄にいいが、本人の気の小ささはその大きな体ではカバーしきれていない。ただ、追い詰めらるとかえって図太さを発揮する。のるとのインクルゥディング・バイオリティ――「ウオテ」に気に入られ、ほんの短期間だが交流があった。祥嗣りゅうしですら実際に会えてはいない。

 ようじはヨージなのでどこで何をしていようが構わない。元気でさえいてくれれば。それ以上何も望まない。

 『舞踏表象(ぶとうひょうしょう)』(習作)主人公。



・王城 理睦(オオギ まさちか)

 としあきと同期。当時は精神科医。小児性癖があり、ヨージに性的暴行を加えたことで自宅謹慎処分を受ける。

 としあきの元に預けられたあづまを一緒に育てた。それが罪滅ぼしだと思っている。

 前院長だった祖父の遺志を継いで、正親(オオギ)病院現院長を務める。としあきの助言通り小児科医に転換。その息子のとしきを雇ったのも彼。それも罪滅ぼしだった。「カタクラ君に嫌われるのが一番ツラいからね」

 『莫烙共応(ならくきょうおう)』(習作)主役。



・朔世 卯典(サクゼ うおて)

 朔世3きょうだいの長女。一番上。

 羅城学園高等部養護教諭。稼ぎが少ないので、こっそりキャバクラでバイト中。

 妹が弟に気を寄せていることを生理的に嫌悪している。



・朔世 天祇(サクゼ てんぎ)

 朔世3きょうだいの長男。2番目。

 えかるが離婚する際に、えかるに付いて行った。現在の姓は小新田(コニタ)。

 羅城学園高等部の数学教師。えとりの担任だが、えとりは彼の正体を知らない。

 のるとに本気の想いがあり、のるとの計画に加担する形でのるとと性行為に及んだ。としあきに知られ、怒り狂うとしあきに半殺しにされた。その後、のるとに頼まれて妊娠中ののるとを高校時代に自宅に匿っていた。のるとの従兄ということになっているが、真実は。知らないほうがいいこともある。

 『人形傾向(にんぎょうけいこう)』(番外編)主人公。



・朔世 時董(サクゼ じとう)

 朔世3きょうだいの二女。3番目。姉の紹介で結婚し、現在の姓は甘利(アマリ)。通称「数学の魔女」

 羅城学園中等部の数学教師。際居が高校時代に通っていた塾で講師をしていた折に、性的暴行を受ける。

 実の兄 天祇に気持ちを寄せており、その気持ちが禁忌だということもわかっていて打ち明けた。

 解いて。解って。この方程式は―――、あなたにしか解いて欲しくない。

 『天際同調(てんさいどうちょう)』(習作)主役。



・朔世 恵穫(サクゼ えかる)

 かげとの元妻。かげと、りゅうしの従妹。上記3人が生まれたのち離婚。現在の姓は小新田(コニタ)。

 数学教師。

 何も心配はいらない。何も要らない。貴方と、貴女の大切な人は、―――私が守る。守れたでしょう?ねえ、そうだと言って? お願い。お願いだから。そうじゃないと私―――。おかしくなりそう。

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