第18話
「レイアスさん大丈夫でしょうか……」
「互角っすからね。気は抜けないっすけどレイアスさんは強いっすよ。だから大丈夫じゃないっすか? というか、吹っ飛ばされて帰ってきた俺の心配はしてくれないんすね」
「受け身は取られていたみたいなので、大丈夫かなって思いまして。エリクさんはレイアスさんの援護に向かわないんですか?」
ミディアが視線を向けた先では赤いオーラを纏ったレイアスとアストレイと名乗った黒いオーラを纏った契約騎士が凄いスピード切り結んでいた。
戦況はエリクの言う通り互角だ。
レイアスがブレードライフルを手首のスナップをきかせて小刻みに斬りにいけば、アストレイもその動きを見切って、的確に刃を合わせてくる。
レイアスが一旦引こうとすれば、今度はアストレイが黒のロングソードを上下左右――軌道を読ませないような動きでレイアスに斬りかかっていく。
そんな高レベルな剣戟を見ながら自分は参戦しないのか? とミディアに問われて勘弁してくれと言わんばかりに首を横に振った。
「いやいやいやいや!? あんなのに紛れたら死んじゃうっすよ!? というか、あれに下手な横やり入れたら逆に不利なるだけっす」
「はあ~、そういうものなんですね」
ミディアも戦闘では殆ど役に立たないので、エリクの話に納得したように頷いていた。
しかし、そこに待ったをかける人物がいた。
「いや、このままじゃマズいわね」
「?」
「どういうことっすか?」
疑問符を浮かべるミディアとエリクに対し、リオンはレイアス達の戦いから目を離さずに返答する。
「よく見なさい。あのアストレイとかいう男……レイアスとあれだけ打ち合っているのに涼しげな顔をしているわ。レイアスの方は余裕ぶった顔つきをしているけど、疲労の色が濃くなってきたわね。たぶん長時間の打ち合いは不利よ」
「じゃあ、マズいじゃないっすか!?」
「え、エリクさんなんとかして下さい!」
「死ぬって言ってるでしょうが!?」
やいのやいのとやりとりをする二人を横目で見つつ、リオンは一つため息を吐いた。
「はぁ、しょうがない……ぶっつけ本番になるけど試してみましょうか。レイアスはそう悪い男でもなさそうだしね」
「「?」」
一件粗暴にも見えるが妙に義理堅い傭兵――レイアスをどこか優しげな瞳で見つめたリオンは横で首を傾げている二人を尻目に内ポケットからとあるものを取り出すのだった。
――――――――――――――――――
「はあ……はあ……」
「どうしたんだい? もう終わりなのかい?」
「冗談……はあ……言ってんじゃねえぞ!」
「強がりも結構だけどね。君と僕じゃ契約騎士としての力の差は歴然だよ?」
息が切れかかっている俺に対して、余裕を見せるこいつに腹が立つが事実としてその通りだ。
技量自体は俺がこいつに対して絶対的に劣っているとは思えない。現に今も打ち合えているからな。
ただ、こいつの言う通り契約騎士としての力の差が如実に出ている形だ。
それは俺がこの力を手に入れてから浅いのが原因なのか、ミディアが歌姫として、イルニスに劣っているのかは分からない。人に責任をおっかぶせるのは好きじゃないから、自分が上手く使えていないと思っておく。
ただ、それを今頃認識したところでどうにもならない。
どうするべきだ? 下手な絡め手をやったところでおそらくこいつには通じないだろう。
その時、唐突な声が聞こえてきた。
「レイアス受け取りなさい!」
「あ? おい戦闘中にいきなり何を!?」
リオンが俺目掛けて何かを投げてくる。反射的に掴んだそれは小さいアクセサリー――ブローチか?
どこかで見覚えのある意匠と見覚えのない中心に嵌められた青い宝石……ってこれ!?
「ミディアのと同じやつ!?」
このブローチ、ミディアが持っていた契約騎士になるためのやつじゃねえか!? なんでこれをリオンが?
俺の驚いた声に、全員の視線がリオンへと向けられる。
それに応えたのはリオンではなく、アストレイだった。
「その出で立ち……やはり青の歌姫だったか」
「「「青の歌姫ぇ!?」」」
「そう、改めて名乗りましょう。青の歌姫、リオン・エリュティカよ。よろしくね?」
口元に手を当てながらニコリと微笑むリオンなのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます