第4話【吉川経家《キッカワツネイエ》】

第4話【吉川経家キッカワツネイエ


天正9年(1581年)2月、私が鳥取城に入って以来城兵・領民皆よく戦った...

などとは断じて美化などできぬ阿鼻叫喚アビキョウカンの地獄絵図が目の前に広がっている。水も食料もとうに尽き果て親の躯を子が食むそれが今の鳥取城の姿なのだ。

「もはやこれまでだと思う。場内の者達の助命嘆願と私の切腹を申し入れよ」

「御意。」

-秀吉の返書-

「お腹を召しますは貴殿の配下(森下道誉モリシタドウヨ.中村春続ナカムラハルツグ)のみで良うございます。貴殿は助命いたしまする。」

などと記されていた。

「笑止‼羽柴秀吉に返書をせよ。我も切腹いたす故承知されたし。とな...」

-秀吉の返書-

「上様も貴殿を惜しまれたが御意思を尊重するとのこと。思う存分腹を召されよ。」

「たわけが!飢え死にさせるほどの酷な戦を指揮した将がおめおめと助命の恥辱を受け入れるわけがなかろうが!」

支度を済ませた我らが暇の盃を交わした。

「碌に切腹の作法など教わってもおらぬ故に不調法になるやも知れぬが堪えてくれ。」

フンッ‼

勢いよく刃を突き立てた私を見て

「介錯仕る!」


吉川経家キッカワツネイエ】自害(享年34歳)

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