第7話 無限の廊下

私たちは長い廊下に立っている

左右のどちらを見ても奥まで果てがない。

転入生の舞子は、「おトイレあるのかしら」とつぶやく

まったく暢気な同級生だ


「玲子ちゃん、お弁当を食べよう」

窓から外を見ていると、舞子が声をかけてくる

「いいわよ」

昼休みには、屋上で食べるのが習慣になってきた。


「この鏡なんだけど、見てくれる」

舞子は、丸い鏡を見せる

直径が10cmくらいはあるが、鏡面の部分が無い

かなり古い物で、両面に縄のような文様が刻まれている


「鏡なの?写すところが無いけど」

円形の鏡は、取っ手になる部分が無い。

持つ場合も縁を掴むか、両面にある丸い突起の部分を利用する

神具にも見える


「どこからもってきたの?」

「蔵にあったの」

舞子は、前にも能面を蔵から見つけている

取れなくて苦労したのに、懲りないのか。


「本当に鏡なのかしら」

舞子は廊下を歩きながら、裏表の突起を回している

「とれた、ほら中身が鏡よ」

取っ手をねじると、鏡が2つに分離した


ちょうど両手で使うシンバルのような感じになる

内側が鏡なのだろうが、曇っていた。

廊下の音が消えた


休み時間の筈が、人の気配も消えていた。

だれも居ない廊下の先は、見えないほど遠くまで続いている

「閉じ込められた?」

しばらくすると

「玲子ちゃんどうしよう」

舞子はもう半泣きで涙がこぼれている

鏡が原因と理解しているようだ。


舞子から鏡を受け取ると、逆にねじって閉じてみる

何も変わらない

異界の道からは逃げられない。


教室の扉はあるようだ、開けようとするが無理

窓も開けられない。

これだとガラスを割っても変わらないと思える。


そして廊下の先から何かが歩いてくる

余裕が無いようだ。


お弁当用の塩は万能だ

道切りをしてみる、廊下を横断するように塩を落としていく

舞子の手を引っ張りながら、

「塩は踏まないで」と注意をして、飛び越える。


ガヤガヤと生徒たちの声が聞こえた。

後ろを振り向いても、前を見てもいつもの廊下だ。

泣いてる舞子にティッシュを私ながら、塩を常に携帯する

決意をする。

「高血圧になりそう」

クスクス笑いしながら、屋上に向かう。

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