第6話 黒板の呪文

いつもの席で

外を見ていた。顔を教室内に向けると

「何語なんだろ」

当番が消し忘れたのか文字が残されている


もう誰も居ない教室で

少女は席を立ち、黒板に近づいた。

黒板の文字は

ひらがなに見えるが、鏡文字のようだ。


鏡に映すと、正しく読める文字になる。

手鏡を出して映す

『ごうぷくをおこなう』

意味がわからない

「感染呪術かしら」

生徒に向けての呪詛を、堂々と書けるのは

やぶられない強い呪いに見えた。


「やっかない人が居るみたいね」

でもイタズラで書いたとしても、誰かが気がつくと思える

または当番が消すだろう。


ためしに黒板消しを使うと

消えない。

「霊力で書いているのね」

少女はため息をついた。

いつものように塩では、追い払えない代物だ。


「しかたがない、神社にいくか」

下校時に鳥居をくぐり社殿にはいる

「おねがいがあるの」

私が声をかけると、彼女はふりむいた

黒髪でボブヘア、瞳が縦長で猫のようだ。


「また借りを作りたいの」

抑揚がない言葉は、神秘的に感じつつも威圧感がある

ヤクザに絡まれたらこんな感じなのだろう。

抵抗できない恐怖がある


状況を説明すると、ふんふん言いながら

「それは生徒達への呪いではないわ」

「まず見せて」

次の日は、社殿に居た少女に制服を着せて

もぐりこませることにした


背格好も同じだ、制服を着せると同級生にしか見えない。

教室で、黒板の文字を見せると悩んでいる様子だ。

「これは、問題ないわ」

あっさりと言うと帰ろうとする

「説明くらいしてよ」

私は手を引っ張ると、眉をあげながら

「なんかおごって」


近所のファミレスで、パフェをもぐもぐしながら説明を始めた

「ごうぶくは、降伏と書くの」

ノートの端に文字を書いて見せる

「悪霊退散みたいな意味」

「そして反転させているので、悪鬼悪魔のたぐいにしか読めない」

なるほど悪魔は鏡文字を使うと聴いた事がある


「私がこの前に、校長から頼まれて書いたわ」

えっとなる私に向かって

「あの学校で事故が多いでしょ、御守りよ」

確かに地縛霊とか居たが

私は「なら社殿の時に言えばいいでしょ」


「パフェで借りを返してもらってるだけよ、安いもんでしょ」

と2つめも注文した。

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