第5話 チェンジ

「またやっかいなものを」

2階の窓から見ていると、妹が両手に箱をもって歩いてくる

「おねえちゃん」

階下で妹が呼んでいる、この子もある程度は見えるらしい


「なに」

そっけなく答えると、妹は興奮した様子で

「神社の裏で見つけたの」と

箱を見せた

中に動物の子供らしいモノが居る


ただ毛が無いのだ

赤ん坊の犬でも猫でも

毛は生えたまま生まれる。


しかし、このモノにはピンク色の表皮しかない

「ペットはダメよ」

冷たく言うと、妹は眉をひそめて

「かわいそうだよ、死んじゃう」

と頑固に主張をする。


博愛主義なのかもしれないと

内心はにやにやしながら、

「お母さんに相談をする?」と聞いてみる。

母親は苦手らしく、「黙って飼いたい」と

無理難題を言い始める。


とりあえず、妹の部屋に置いて

保温のために古着にくるんだ。

「なにをたべるのかな」

脳天気な妹を見ながら、長生きはできないと覚悟した。


動物用のミルクもないし、とりあえず皿に水と

パンくずを用意して箱に入れる。


朝になると妹がとびついてきた

「元気になったよ」

箱の中をみると、毛が生え始めていた。

頭髪が生えている

サルのようにも見えるが、人にも見える


私は「学校の時間よ」

妹を送り出して自分も登校した。

教室の椅子に座りながら

仏壇にある金剛鈴を思い浮かべる。


学校が終わると、急いで家に戻る。

「おねええちゃん」

妹が呼んでいる、仏壇から金剛鈴を取り出して

キッチンに行くと、

妹が居た


もうすっかり大人だが、頭は妹のままだ。

裸のままフラフラしながら近づいてくる。


食器棚にある食塩の箱をとり、手にぶちまける。

妹らしきモノにふりかけながら、金剛鈴を鳴らした。


妹は形をうしない、しおれるように小さくなる

動物の子供らしいモノに戻るが、

それ以下にはならないようだ。

「ただいま、おねえちゃん居る」

学校から戻ってきた妹に、どう説明しようか悩む。

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