5章  茜色に染まる坂

「カランカラン」


「ごちそうさまでした。」


快斗くんと話そう。そして私の方から好きだと言おう。もう一度好きになってむら雨ために。


『あれ?立花さん?』


なんで、ここに快斗くんが。

確かに決意はしたけど、心の準備がまだ。


『この先をいったところにある喫茶店、煉瓦屋っていうんだけど、おじいちゃんがやっててたまに手伝いに来てるんだよ。』


「たまたま?」


『ん?どういうこと?』


「いや、さっきまでそこに行ってたの。そして優也くんと話してた。」


『え、優也と?あれ、ここって教えたことあったかな。』


彼の反応を見るにどうやら偶然らしい。

でもよかった。やっぱりいうなら今しかない。


「あのそれでね・・・。」


『立花さん。やっぱりあなたのことが好きです。』

私の話を遮って彼が言った言葉が坂道にこだまする。

彼は止まらない。


『優也と話したってことは今の俺の気持ちバレてるよね?』


『事情も知ってるけどやっぱり・・・。』


「私も好きです!」


『え、』


これ以上は彼に言わせるわけにはいかない。彼には悪いけど私が言わなくちゃいけないことだと思ったから。


「私もあなたのことが好きです。今度あったら私から言うつもりでした。」


『・・・本当ですか?』


「はい。」


『・・・めちゃくちゃ嬉しいです。』

よかった、喜んでくれてる。だけどあの時のことを実際にどう思ってるんだろうか。


・・・。


「その、事情を聞かないんですか。」

怖かったが、聞くことが私がするべきことだと思った。

知らなきゃいけないと思う。


『確かに色々と思うことはある。だけど今は、今の立花さんの言葉が全てだと思うから。だから好きだと言ってくれて本当に嬉しいんです。』


『それに、なんとなくだけど立花さんの人柄はわかってるつもりです。嘘をつくような人じゃない。けど嘘をつくようなことがあればきっと理由があったんだと。そう思ってます。』


『だからそこはいいです。それにこの前優也と話して、僕の性格が立花さんを不安にさせたんだとも思った。だから、』


「快斗くんのせいでは・・・。」


『俺のせいとは全く思ってません。』


「・・・。」


『・・・。』


『あなたが好きです。』


ああ、優也くんの言った通りだ。優しい人には間違いはない。けど、すごく自分に素直な人だ。今私のために、自分のために言っている。

そんな彼にやっぱり私の惹かれてる。


「私もです。」


もう無駄な言葉なんていらない。

彼の言葉からそんな気持ちを感じる。


ああ、大好きだ。


彼の素敵な、晴れやかな顔に鼓動の音が止まらない。顔も熱い。

バレてないよね、、恥ずかしい。


いや、自分でも顔が赤いのがバレバレだ。


・・・でも多分、彼には気付かれてないと思う。



(ありがとう。)



いつかこの夕焼けに感謝しないいけないかな。


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