1章② 告白予報は雨模様

そこから数日が経った。

最近は目線で彼女を追う日々が続いている。


学生生活におけるスタートダッシュは成功。

友達もできてクラスの雰囲気も悪くない。


成功しているからこそ、自分に興味関心のない一部の人が気になってしまう。

こんなことを気にするのは、僕が根っからの陽キャラじゃないからかもしれない。


とにかくあの自己紹介以来、彼女が気になってしまう。

もしかしたらめちゃくちゃ嫌ってるんじゃないかと心配してる。


チキンすぎる・・・。


だが、それは杞憂だったのかもしれない。


数日観察して分かったことは、おそらく彼女は他人に関心がない人だということ。


僕がそう思ったのは、ちょっとした女子同士の会話からだった。



「今日クラスの子で女子会しようよ〜」


きっかけはこの一言。


クラスの中で大体メンバーが固まりつつあるこの時期。改めて仲良くなりたい気持ちからの提案だと思って聞いていた。


だけど、僕はその後すぐにちょっとした違和感に気づいた。


提案者は女子の中心メンバー。クラスの女子会といいつつ、全員に声をかけてるわけではなかった。


事件はその後。


立花さんは声をかけられていた。だけど立花さんと仲良くしていた隣の子には声をかけていない。

周りでもちらほらそんな様子が見られていた。


・・・あんまり気持ちのいいやり方じゃないな。


邪推でしかないが、立花さんが誘われたのは「美人だから」だと思う。

自分たちのグループに取り入れたいなんて思いがあったのかもしれない。


モヤモヤするが、僕がどうこうできる話ではない。

ここで僕が割って入るのはおかしな話だ。


自分の中で葛藤してる間に立花さんは友達に子と教室を出ていた。


声をかけた女の子たちの雰囲気が悪い。


・・・多分断ったんだろうな



すごいな。


あれこれ考える僕とは対象的な人だ。




僕が彼女に明確に興味を持ったのは多分この時だ。


好き、というよりこの人に興味を持ってもらおうという好奇心。


その夜、僕は早速彼女にラインを送った。

普段の僕なら絶対できない行動だ。だけど今の僕には“イメージ”が味方をしてくれている。


(彼女に見てもらいたい。)


これが僕の初めての恋愛模様。

他人はどうあれ、興味を持って貰いたい思いがこの気持ちを発展させている。



***



好かれている・・・と思う。いや、好かれてるだろ。


立花さんと連絡と取り合ってから2ヶ月が経とうとしてる。

あれから頻繁にメッセージを取るようになり、一緒に下校することもあった。


イメージ通りの部分とそうでない部分があって、本当に魅力的な人だ。

僕は間違いなくこの人に惹かれている。


ちょっと前から考えてた。


彼女に好きだと伝えよう。と。


嫌いな奴と何回も一緒に下校するだろうか、連絡を取り続けるだろうか。

少なくとも嫌われてはいない。


今日はなんだか成功する気がする。


***


「今日立花さんの降りる駅に用があるんだ。一緒に降りていい?」


冷静に誘っているが声が震える。こんなにもなものかと驚く。



「どうしたの?」


彼女は多分気づいてない。と思う。


「ちょっとね。」

心臓がすごいことになってる。悟られてはいけない。


電車から降りて、向かったのは人目のつかない駐輪場。

ここなら誰にも見られない。



がんばれ、俺


・・・・・。


・・・。


・。



「好きです。付き合ってください。」



言った・・・。



時間が止まるなんて表現が大袈裟じゃないことを自覚する。


時間が長く感じる。



長く、、、



・・・長すぎ、、か?


彼女は考えていた・・・と思う。

僕の感覚ではなく、本当にかなりの間があった。





「ごめんなさい。付き合っている人がいます。」




・・・。




彼女はその後も言葉を続けていたが、最初のこの部分しか聞こえていなかった。

ごめんなさい。という響きが僕を上の空にさせた。



彼氏がいた?いつからだ?そんな素振りはあったか?いやないはずだ。てかなんでそれならそもそも僕といた?一緒に帰った?いつからだ?なんでだ?


彼女に話は耳に入らない。思考が氾濫する。


人というのは予想外の事態に陥ると脳がフル回転するものだ。

さっきから洪水のように思考が加速している。


が、人の脳はこれに対応するようにできてはいない。

考えれば考えるほど実際の自分は動けなくなっていくものだ。



その後のことは、よく覚えていない。一人で電車に乗って帰ったと思う。


俺の駅は立花さんが降りた駅からすぐ近く。

助かった、今どんな顔してるか分かったもんじゃない。


改札を通ったあたりで雨が降っていたことに気づいた。



・・・みんなは次々と歩いていく。


・・・俺は止まっている。


(なんで)


まるで俺の周りだけ時間が止まっているような、


(なんで)


雨の音がうるさい。


うるさい。


・・・もっと



この世界から俺だけが浮世離れしている。



・・・そんな感覚。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る