1章① そのピエロは踊る

高校に入学した時、僕は正直に言えば必死だった。


これから通う高校には中学からの友達が一人もいない。

友達作りが早急のミッションとして存在していた。


・・・理由は至極簡単。

僕が第一志望の高校に失敗したから。


同じ高校を受験した友人とは離れることになってしまった。

多分お互いこうなるとは思ってもなかったと思う。


環境が変わればまた・・・


当時はかなり落ち込んだけど、今は気にしてる場合じゃない。

一刻も早くこの新しい環境になれなきゃいけない。


自分の心配もあるが、何より他の高校のやつが楽しそうにしてるかもと想像するのが辛い。

僕たちだけ暗い雰囲気なんてまっぴらごめんだ。


嫌な言い方だが、僕がいる高校はちょっと勉強ができる人の滑り止め的な位置にいると思う。だからこそこんな心配が必要になる。


・・・辛い。


みんなの目に覇気がないように見えるのはこのせいかもしれない。


・・・惨めな思いをするのだけは嫌だ。


負けたくない。


誰に、何に負けたくないと思ってるのかわからない。

そんな具体的な対象なんてないんだから。



このクラスで中心人物になろう。



この決心をしたのはそんな心から。

自分に自信なんてない。どっちかと言えば根は暗い方だ。

というか、あるやつはこんなこと思わないんじゃないかな。

こういうのは気づいたらなってるもんだろう。


僕の親友がそうだったように・・・。


中学では「人気者」の『友達』というポジション。

『優しい人』というのが僕を評価する上で一番多い印象らしい。


・・・人に優しくするのは人に嫌われるのが怖いからだ



・・・。



これから新しいクラスで自己紹介が始まる。

案の定、淡々と静かに何事もなく進んでいった。


少し期待していた自分がいた。



前みたいに誰かが。と



・・・よかった。



これで腹がくくれる。


「次!柏田くん」


僕の番が回ってきた。


・・・


「初めまして!俺の名前は...」



これは俺なりの決意表明。


結果は成功、なんだと思う。ほとんどの人が笑ってくれた。



・・・気になるのは一番前にいる女の子。


・・・反応が悪すぎる。


普通、愛想笑いでもするもんではなかろうか。

なんだこいつ。


彼女の名前は、確か・・・



そうだ『立花さん』だ。



嫌なやつ。




・・・覚えとこ。



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