僕の彼女は、ねこです。

白熊男

ねこ

僕の彼女は猫っぽい。外見も性格も。彼女は友達から猫と呼ばれている。それくらい猫っぽい。


今日は、急にカフェで放課後デートをすることになった。彼女がそういう気分になったからだ。


今、彼女にじーっと見つめられている。彼女がなにか重要な話をしたい時の合図だ。


「どうしたの?」

「……私、猫になりたいの」

「は?」

「私、猫になりたいの」

「聞こえてる」


聞こえてる、めっちゃ聞こえてる。でもごめん。全く意味がわからない。

冗談で言っているわけではないのだろう。目が凄い真剣だし。まず、彼女は冗談とか言うタイプの人じゃない。

だからこそ、ますます意味がわからない。


「私、猫飼ってるでしょ」

「あぁ、あの黒い猫ね」

「そう。その飼ってる猫がなんか楽しそうだったから」

「猫になりたいと」

「そう」


まぁ、うん、わかった。でも、残念ながら僕は神じゃない。人間だ。さすがに人を猫にすることはできない。


「猫になりたいって、具体的にどうするつもり?」

「……猫っぽいことをする」

「今でも充分猫っぽいからもうそれで良くない?」

「……もっと猫っぽくなる」

「……がんばれ」


僕は何を聞いているのだろうか……。


彼女は、まだ僕のことをじーっと見つめている。他にも重要な話があるのか?


「どうしたの?」

「猫になるのを手伝ってほしい」

「ん?」

「私を猫だと思って接してみて」

「……わかった」


猫だと思って……、なにしたらいいんだ?

とりあえず、あごの下でも撫でてみるか。


彼女の方に手を伸ばし、あごの下を優しく撫でる。彼女は目を大きく見開く。あれ、失敗だったかな?


僕は手を引っ込めようとしたが、やっぱりやめた。彼女が目を細めて気持ちよさそうな顔をしていたから。


……彼女は猫なのか?


いつの間にか、彼女はこっくりこっくりと船を漕いでいた。風邪をひくと困るので、僕が羽織っていた上着を彼女にかける。


寝ている彼女の柔らかい髪を指ですいていると、あることを思いついた。


鞄からスマホを取り出し、カメラアプリで彼女の寝顔をとる。その後に、加工して彼女の頭に猫耳をつけた。


「ねこ」


僕は写真をホーム画面に設定しながらぼそっと呟く。




僕のねこが起きるまで、コーヒーでも飲んで時間を潰しておこう。



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僕の彼女は、ねこです。 白熊男 @sirokumaotoko

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