第3話

全員が騒然とする中、ノエルという人形は、淡々と説明を開始した。



ノエル「部屋にあったタブレット、みんな持ってるよね?ちょっと見てもらえるかな!」


俺は、タブレットに目を落とした。


【パスワードを設定してください。】


ノエル「まずは、君たちの好きなパスワードを設定してくれ!ただし、他人には教えないようにな!そこには、重大な個人情報が記録されることになる!だから、他人には見られちゃいけないんだ!忘れないようなパスワードを設定してくれよ?」


...なんなんだ、これ...


明らかに、異常だ...


そんな言葉では片付けられないほどの雰囲気に、俺たちはただ、飲み込まれるしかなかった。


【パスワードの設定が完了しました。】


ノエル「よし、みんな、パスワードの設定ができたみたいだな!そんじゃ、次は、その画面を見てくれ!」


【NG行動】【未公開1】


ノエル「2つの項目があるだろ?未公開の項目はタップ出来ないようになってる!今は、左にある項目をタップしてくれ!」


俺は、言われた通りに、【NG行動】の項目をタップした。





【ゲーム参加者が、この建物の外に出る】





...なんだ...?これ...


ノエル「それがキミたちのNG行動!それぞれ、一人ひとりが、違うNG行動を持ってるよ!

これがどんな意味を持つか分かるかな?」


レイナ「これをすると死ぬ、とか。......おおかたそんな所でしょう?」


皇さんが、若干震えた声で呟いた。


ノエル「ご名答!!これは他人に知られるとかなり不利になるから、ちゃーんと守ってね!なんと、そのNG行動の通りになると、キミたちは死んじゃいます!だから、気をつけてね〜!」


ノエル「実は、メインゲームはまだ先なんだ!先に、余興があるんだ!」


余興...?


ノエル「正直言っちゃうとね、メインゲームは9人で遊ぶようにルール設定してたの。だーかーら、1人。ジャマなんだよねー!見せしめも兼ねて、この余興ゲームで1人殺しちゃおーって話!!」


...俺は、ほぼ考えることができなくなっていた。


ノエル「それじゃさっそく、余興ゲームのルール説明といこうか!」


ノエル「その名も...『殺人投票』!!!はい、みなさん拍手ー!!!!」


誰も拍手なんてするはずがなかった。


ノエル「えー、ノリ悪いなぁ、つまんないなー。まぁいっか、じゃ、引き続き説明するね!」


ノエル「ルールは簡単!参加者は全員この中の誰かに投票して、最多票を獲得した人が死にます!以上!」


アカネ「以上ってことはないでしょう。もう少し、詳しく説明しなさい。」


ノエル「詳しくって?」


アカネ「例えば、投票しないとどうなるの?」


ノエル「あー、安心して!誰かしらに投票するまでは、このゲームは永遠に終わらないよ!自分の意思で殺す相手を選ぶのが先か、餓死するのが先か!早く選んだ方が得策だよね〜!」


アカネ「なるほどね。」


アカネ「じゃあ、私からはいいわ。他のみんなは、大丈夫かしら?」


マサミチ「特には大丈夫かな。」


ランマル「ボクも何もないよ〜」


ノエル「みんな、大丈夫みたいだね!それじゃ、タブレットを見よっか!」


【NG行動】【投票】


【未公開1】の項目が、【投票】という項目に変わっている......


ノエル「【投票】を押してごらん!みんなの顔と名前が出てるね!そこをタップして、確認が出るから、それにOKしたら投票が完了するよ!」


ノエル「それじゃ、殺人投票のルール説明は以上!せいぜい、早く投票することだね〜!」


案内人「それでは、ゲームを開始いたします。」



案内人の言葉を最後に、俺達には、しばらくの沈黙が続いた。


誰も何も、話さない。


俺も四も、なにも口にできない。


マサミチ「少し、僕の話を聞いてくれるかな。」


是本さんが、静寂を破った。


マサミチ「まぁ立ち話もあれだし、そこの円形テーブルに座ろうよ。」


俺たちは、円形テーブルに着席した。

左隣が四、右隣が是本さんになった。


アズマ「それで、話ってなんだよ?」


ツムギ「つまんねーことだったら、わかってるよなぁ?」


キョウスケ「まぁまぁ、イノちゃん!落ち着けって!ハハハ!」


ツムギ「触んな車田っ!」


マサミチ「...まぁ、そう急かさないでくれ。というのもね......。もしかしたら、誰も死なない方法があるかもしれないんだ。」


アンズ「えっ...そんなのが、あるんですか!?」


マリ「気になりますね...」


ランマル「へぇ〜?どういうの?」



マサミチ「まぁ手短に話すと、みんなが時計回りに、1票ずつ票を回すんだ。例えば、僕が東雲くんに投票、東雲くんが神木くんに投票、って具合にね。」


レイナ「なるほど...確かに、いい作戦ではあるわね。」


アズマ「......」


ナオト「四?どうしたんだ?」


アズマ「あぁいや、なんでもない!いい作戦だと思うぜ!直斗もそう思うだろ?」


ナオト「あ、あぁ。(なんでもない......のか?)」


みんなが賛同している中、桐江さんが口を開いた。


アカネ「ちょっと待って、是本さん。それじゃ、まだ大事なことが不確定なままよ。」


マサミチ「どうしたんだい?桐江くん。」


アカネ「同票になったときの説明なんて、受けた覚えはないわ。このゲームは、もしかして、誰かは最多票を獲得しないといけないんじゃないかしら。

...ごめんなさい、勝手な推測をしてしまって。」


マサミチ「いやね、そう言われると思ったけど。でも、じゃあ君は、もう決まっているのかい?」


アカネ「何かしら」


マサミチ「言いにくいが...『誰に投票して、誰を殺すか』、だよ。」


桐江さんは黙り込んだ。


マサミチ「本気で犠牲者を出すつもりの人は、まさか居ないよね?なら、少しでも、全員が助かる可能性を追求したほうが、僕はいいと思うんだ。」


俺たちは、彼の話を黙って聞くしかなかった。

いい話のように聞こえるが...

本当に大丈夫なのだろうか?


レイナ「やることが決まったのなら、早めの行動が最善ですわ。このままこのゲームを続けていても、時間切れは来ません。なら、わたくしたちに出来ることは、疑心暗鬼が深まらないうちに、この『殺人投票』をさっさと終わらせてしまうことだと思いましてよ。」


マサミチ「ああ、皇くんの言う通りだ。みんな、さっきの作戦で異論はないね?」


全員が頷く。


マサミチ「それじゃあ、自分の左隣の人に、全員投票しよう。くれぐれも、間違わないように。」


俺は、【投票】の項目をタップした。


俺の投票先は......


作戦だとわかっていても、親友に投票するのは気が引けるな...だけど、みんなが助かるためだ、仕方ない。


【『神木 四』に投票しますか?】


俺は、【OK】をタップした。


しばらくすると...



ノエル「どうやら、全員の投票が終わったみたいだね!じゃあ、投票結果を読み上げるよ!」


ノエルが意気揚々と話し出した。

大丈夫だ、大丈夫なはずだ。





ノエル「桐江 茜、1票!」


ノエル「車田 京介、1票!」


ノエル「白雪 鞠、1票!」


ノエル「猪狩 紬希、1票!」


ノエル「是本 真理、1票!」


ノエル「東雲 直斗、1票!」


ノエル「飯伏 蘭丸、1票!」


ノエル「皇 麗奈、1票!」






...はぁ、とりあえず、無事に終わって良かった。


やったな!と、左隣の四の肩を叩こうとした。

























......が。



ノエル「早坂 杏珠、0票! 神木 四、2票!」




え......?


俺は、頭の中が真っ白になった。

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