4「女子高生に……? このパスタ、その子にも振舞ったの?」

 テーブルの前で座る柊に料理を出すと、彼女はじっくりと観察をする。


「綺麗ね。トマトの赤が良いアクセントになっているわ」

「味も気に入ってくれるといいけどな。よし、いただこうか」


 二人で「いただきます」をして、俺たちはフォークを手に取る。

「複数の具材が混ざって、すごくいい匂いだな! さて、肝心の味は……?」

 俺が咀嚼している間も、柊は興味深そうに感想を待つ。

「うん! パスタに具材の味が染みてうまい! それにキノコを咀嚼した時の香りが広がっていく感じ、すごく好きだな。黒胡椒を多めに入れてスパイシーにしても良さそうだ」


「私も、いただくわ」


 続いて食べ始めた柊は、ツナを多めに取るようにパスタを巻き取る。そして頬にかかる髪を片手で抑えながら、ゆっくりと口に運んだ。



「……ん、ふふっ。ツナってパスタと合うのね。それにミニトマトを噛むと、口の中で一気に味が変わるのが不思議。化学反応みたい」


「キノコとツナだけのシンプルなパスタもいいけど、このトマトがいい味を出しているよな。後で結菜にお礼をしないと」



「ゆい、な?」


 うっかり俺がお隣JKの名前を口にした瞬間、少しだけ……柊の声が低くなった、ような。

「え、えっと。隣に住む女子高生だよ。最近知り合って、野菜を貰うようになった」


「女子高生に……? このパスタ、その子にも振舞ったの?」


「いや、柊だけだが。どうしてだ?」

 答えを聞いて柊はそっけなく、「そう」とだけ言ってまたパスタを食べ始める。

 密かに顔色を窺うと、笑みが浮かんでいるように見えた。やはりそれだけおいしいのだろうか……!


 穏やかに流れる空気の中で、俺たちはゆっくりとごはんを味わったのだった。

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