3「お兄さんってその艶姫さんの事、大好きなんだぁ?」
「凄い量の野菜だな」
お隣JKにご飯をねだられ、俺はそのまま部屋の片隅にあった段ボール箱を見てくれと頼まれ、思わず声を漏らした。
中に入っている大量の野菜は、お隣JKの実家から送られてきた物のようだ。
「お祖母ちゃんが趣味で作っているの。私が一人暮らしをするって聞いて、送ってくれた物なんだけど」
「趣味の範疇かよ、これ。というか、君はどこ出身だっけ」
「世界一即身仏の数が多いことで有名な、山形県だよ!」
「女子高生が自らの出身地をPRする時にチョイスするものじゃなくない!?」
無難なところだとさくらんぼとか、洋梨の収穫量が多い事で有名だ。
それに東北は美人が多いとか。これは俗説だし、目の前のJKは美人だが残念な子だ。
「お祖母ちゃんがせっかく作ってくれたお野菜をダメにしたくなくて。でもどうすればいいかずっと悩んでいて……それで、ね?」
恥ずかしがる彼女の視線の先には、コンビニ弁当の容器やエナジードリンクの空き缶が積み重なった台所がある。なるほど、察した。
「分かった。実を言うと俺も夕食の材料に困っていたところだ。この野菜を使わせて貰えるなら助かる」
「本当!? じゃあこの野菜で何を作ってくれる? ステーキとか?」
「野菜をステーキに変えたら神もドン引きするだろ……」
だけどステーキか。そんな上等な物は無理だが、一つ閃いたレシピはある。
「よし、決めた。今日は【アレ】にしよう」
俺は自室にお隣JKを招き、台所にて調理の準備を進める。
食材の下準備をしていると、彼女は置かれていたタブレットを持ち上げた。
「お兄さん、このタブレットの裏に貼ってあるシールは何?」
「ああ、それは俺の推している配信者さんのマスコットキャラ『おこメェ』だよ。艶姫さんっていう、推定二十代くらいの顔出しNGの大人のお姉さん。知っているか?」
「……うーん、どうかなあ? ちなみに艶姫さんのどこがいいの?」
「まずゲームの腕前は勿論、明るく元気なところだな! 観ていて楽しくなるし、少し低い声も好きだ。一度SNSでやりとりしたのは尊い思い出で……あ?」
つい語ってしまうと、お隣JKは口元を抑えてニヤニヤしていた。例えるなら「う
わ、オタク君って普段無口なのに早口で喋るね(笑)」と、言わんばかりの笑みだ。
「ふーん? お兄さんってその艶姫さんの事、大好きなんだぁ? もしかして今日も
配信を見ていたとか?」
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