ドSのクロウ

 ハロルドをギルドの医務室に運んでから別の部屋で俺は正座をさせられていた。

「なんなのクロウ君、初手の拘束術で勝負決まってたよね、なんで何度もムチで打ちつけるのよ」


 えっ! 初手で決まってた? 彼は破ろうとしてたよ多分……


「彼は魔法使いなんだよ、それを魔法を封じて滅多打ちなんて」


 魔法使いかよ!プロレスラーみたいな体型してるからわからなかったよ、なんか杖でも持てよ!


「ハロルドは元S級冒険者でギルマスなのよ、クロウ君がちょっとボコられるの楽しみだったのにな……」


 ボコられるの楽しみって、ちょっと弁ちゃんさん?


「ハロルド、マナが集まらなくて焦ってたよね、あんな魔法封じがあるんだ」


「『魔法封じ』ってものじゃないけどね、まとわり付くマナが気持ち悪いから影に吸わしてるんだよ」


「クロウ君のそれがあれば魔法使いの多いエインジェルで無敵じゃない?」


「どこまで通用するかわからないよ、エインジェルには世界樹があるからね、無尽蔵に生産されるマナが膨大過ぎるよ」 

 搦め手からめてじゃ限界なんだよ、オーちゃんみたいな純粋な武力が結局最強だよ。


「とりあえずハロルドに謝りに行くわよ」

 そうだな、縛り上げてムチで殴りまくったもんな……えっ! 端からみたら俺、変態じゃね?


 医務室ではハロルドが目を覚ましていた。

「お前クロウだっけか、あんな方法があるんだな」


「俺はまとわり付くマナが嫌いでね、快適に暮らすために覚えた」


「マナが嫌いって獣人みたいなこというんだな、どうやってるかは聞かんが出来ればその方法を広めないで欲しい」

 

「どうしてだ?」


「この国は人、獣人、エルフ、様々な種族が自由に暮らしている、なんでかわかるか?」

 俺は静かに首を横に振る。


「ある程度種族のパワーバランスが均等だからだよ、人が『魔法』獣人が『身体能力』エルフは『古代魔術』が使えるからお互いに抑止力が働いているんだ、それをお前は崩す恐れがある……ただでさえ人の魔法が発展したのはこの500年だ、やっと人が対等に生活できるようになったのに崩して欲しくない」


「広めたりはしない、だが俺の安全は保証されるのか? 危険分子はほっとけないだろ」


「だからこそのA級だ!A級はギルドに貢献してもらう代わりに保護されるからな、それに元S級の俺に手も足も出させず勝ったとウワサは流れてるハズだ、だから二つ名『ドS』をやろう……」

 なんだよ『ドS』って確かに縛ってムチ打ちしたけど……


「へんな二つ名流すんじゃね〜よ、そんなん付けられるくらいなら自分で考えてくるわ!」


「お前の仲間を見てみろ、『鉄壁』『裸王ラオウ』『珍獣』だぞ、人のウワサは止められんwww」


 ブワッ涙が……弁ちゃん達もこんなにつらかったんだなゴメンよ。

 

「今日からお前はA級だ、そしてパーティ名登録は『スリーアウト+』にしておくが『スリーアウト』と名乗るようにしといてくれよ、今更変えられてもお前らは有名すぎる」

「そうなの仕方ないわね、ハロルドの顔を立ててあげるわ」

 

「結局『スリーアウト』って名乗るのなら俺入らなくても良かったんじゃないの?」

 言ってみたが無視された!


「よろしくね『ドS』!」

「凄いムチさばきだったよ『ドS』♪」

 オーちゃんは笑顔で親指をグッと立ててた。


 絶対に違う二つ名を広めてやるからな、ルナとシロがいじめられたらどうすんだよ! 


 ルナ!シロ! ゴメンね今日からお父さんな『ドS』とか『変態』とか呼ばれるかもしれないよ!


 どうしてこーなった!!!!!!


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