第5話 

ガイルとサキが部屋を出てから1人考える。

大切な仲間が捕まって意気消沈している様子のガイル。サキも悲しそうな顔をしていた。


この知らない場所に来てから、何も持たず、能力もわかっていないから何の価値もない僕を助けてくれた2人。

そんな2人に何かしてあげられることはないか……。


「……!」


自分の意思で誰かのために何かをしたいと思ったのはこれが初めてだったと気づく。


道具でしかなかった僕に自由や意思を与えてくれた人に何か恩返しはできないか、そう考えながら気づけば先程見せてもらった写真の男を神眼で探し始めていた。


透視のスケールを最大まで広げ、敵対しているだあろう見たことのない紋章の描かれた建物を見つけた。そこにいる動物や人の視界を借りて1人の男を探す。


言葉がわからないから口唇術で情報を得ることもできないし、借りている視界だと透視は出来ないから近くにある視界を一つ一つ飛んで見て行くしかない。

以前他国の機密を得てこいと命令された時よりも過酷だ。

膨大な時間と体力の必要な作業だったが、不思議と負の感情は湧かなかった。



どれくらい時間が経ったわからないが、ついに見つけた。

檻の中で鎖で繋がれボロボロの紫色の髪の男。血や泥で汚れて写真で見た色よりもずいぶん黒っぽい髪に、暴力を振られたのだろう腫れ上がった顔をしていたが身体的な特徴と、ぼろ布になり体にまとわりつくだけになっている衣服についたガイルの服と同じ紋章から多分そうだろう。


字の練習用にとサキに渡されていた紙とペンを手に取り、急いで彼の居場所の特徴を描き記す。


兵が壁にかけていた檻の鍵、檻までの通路、見張り、建物

地図上の場所はわからないから鳥の視界を借りて上空から見た場所

拾える情報は出来るだけ全て描き上げた。


全て描き終える頃には真夜中になっていた。


2人が起きているかはわからないが、彼の様子的にそんなに長くはなさそうだったから一刻も早く伝えなければ


そう考え透視で2人の居場所を探す。


何人か人がいる部屋に2人ともいて何事か話している。これは好機だと紙の束を持って駆け出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る