セイside
「かれ、いきる、まだ」
紙の束を差し出しながら発した言葉は、拙い発音ながらもきちんと聞き取れるもので沈黙だった部屋に響いた。
「会議中申し訳ありません!すぐに連れ出しますのでっ」
見張りの兵が子供を連れ出そうと抱き上げると、子供が抵抗し手に持っていた紙が散らばる。
「最近忙しくてあんまり構ってあげられなかったからさみしかったのかな。まったくも……」
散らばった紙を拾おうとしたサキの声が途中で止まる。
「……セイ、これ」
サキが手にした紙には鎖に繋がれてボロボロになったアレンと思われる男性が描かれていた。
それを横から見たガイルがひったくるように床に落ちた紙を拾う。
散らばっていた紙には檻や鍵、見張りと思われる兵の姿、通路、建物などの絵が描かれており一つの場所の特徴を写した物だと推察された。
そして最後の一枚には敵である’ディクタチール'の紋章が書かれていた。
「イリス!お前ディクタチールのこと知ってたのか!?いや、それよりもこれはどういうことだ!!」
動揺したガイルがイリスを揺さぶりながら大きな声で話す。
しかしイリスは早口のガイルの言葉が聞き取れないのか目を白黒させていた。
「イリス!!」
「ガイル落ち着け!お前の言葉は多分伝わっていない」
とりあえず動揺しているガイルから子供を引き離す。子供は大男のガイルに揺さぶられたにも関わらずひどく落ち着いていた。
「イリスといったか。これはアレンか?」
言葉のわからない子供にも出来るだけ伝わるようにゆっくり話しかける。
するとある程度は伝わったのか、こくりと頷いた。
「なぜ知っている?」
この言葉は伝わらなかったのか首を傾げられる。
「…………はぁー。とりあえずこの子供の言う通りだとするとアレンは生きてこの絵の場所にいるということか」
「なら!すぐにでも特定して救出しねぇと!」
「待て、この子供が向こうのスパイだとしたらどうする。こちらを誘き出すための罠かもしれない」
「……っ」
「待って、もし仮にイリスがスパイでこれが罠だったとしても、アレンが捕まったのはこの子がここに来てからだいぶ経ってからよ?その間この子と過ごしたけど私たち以外の人と接している様子はなかったわ。そんな状態でどうやってアレンが捕まった場所を知るの」
「そ、そうだ!こいつには探知系のスキルがあるはずなんだ!そのスキルでアレンを探したのかも!」
「探知系のスキルで特定の人物の居場所を探せるなんて聞いたことないがな」
「っ、でも、他に理由は思いつかないし、イリスが言うようにアレンがまだ生きてるなら早く助けないと!」
「俺は1人でも行くぞ!」
「おい!」
部屋から大きな音を立てて出て行くガイル。こいつは戦闘は一流だが、頭に血が昇るといつも1人で突っ走る。
「っ……ガイルを追え、索敵班を作る」
ガイルはああなったら聞かない。だが1人で行かせ貴重な戦力が減るのも見逃せない。仕方がないが今回はあの子供の罠でないことを祈るばかりだ。
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