セイside
第一印象は度胸のある子供。
森に狩りに行ったガイルに連れられた子供は、知らない場所に連れてこられたにも関わらずやけに落ち着いていた。
薄汚れた格好をしていたが、ガイルの話では他国の貴族とのことで、この砦で預かることになった。しかし行方不明の他国の貴族の子供の情報は特に回ってくることもなく音沙汰はなしだ。
監視と保護の名目のもとサキをつけてみたが、特にスパイらしき動きをしていると言う報告もない。
だが子供らしく無邪気に振る舞う様子もなければ、常に冷静な様子で、貴族としての教養にしては感情の起伏が無さすぎる点が気になった。
もう少し泳がせるかと思っていた矢先。
アレンが捕まった。
アレンは俺やガイルたちの幼馴染で反政府組織"フォースリベル"の幹部だ。
隠密に長けていた彼は斥候の役割を引き受けてくれていた。
彼がこちらの幹部であることは漏れていないはずだから、敵陣に捕まった彼はただの兵士として扱われるだろうから。もう――
「まだ生きてるかもしれねぇ!!俺が探しに行く!」
「無茶を言うな。アレンと一緒にいた兵が捕まったとはっきり言った。彼が生きている可能性はほとんどない。そんな状態で貴重な戦力を無駄にはできない」
「だからってよぉ!!」
「仮に生きていたとしてもだ!……どこにいるのかもわからない彼を探して、さらに救出するのはリスクが高すぎる」
「じゃあお前は見捨てんのか!?」
ダンっ
「……ガイル。憤りを覚えているのが自分だけだと思うのか」
会議中だというのにガイルの言葉につい力のままに机を叩きつけてしまった。
室内に重苦しい沈黙が流れる。
「ガイル……セイ……どうにもならないの?」
不安そうな表情のサキが小さくつぶやくがそれに返事ができる者はおらず、しばらく沈黙が流れる。
「あっ!こら待て!」
そんな嫌な沈黙の中ドアの外が騒がしくなったと思うと、部屋の外の護衛の静止を振り切って例の子供が部屋の中に入ってきた。
「イリス!どうしたんだ、ここはお前がくるところじゃねぇぞ」
ガイルが子供に近づくと紙の束を抱えた子供が初めてこちらの言葉を話した。
「かれ、いきる、まだ」
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