見習い動物看護師最強のビーストテイマーになる

メリッサの契約霊獣

　あかりは剣の練習と共に、鞭の練習もする事にした。次第にグリフの作ってくれた、鞭の的である空き瓶を落とす事ができるようになった。あかりは強くなりたいと思うと同時に、自分と契約してくれた霊獣がどのような能力を持っているのか知りたかった。あかりの契約霊獣、ヒョウの霊獣セレーナ、ライオンの霊獣レオ、狼の霊獣ルプスは、あかりにいつでも呼んでくれと言ってくれたが、あかりは彼らの魔法をよく理解していない。まず最初に霊獣セレーナを呼んだ。

「メリッサ、何か困った事があったの？」

　あかりは美しいヒョウの霊獣に軽く首を振った。セレーナは優しい瞳であかりを見つめた。あかりはセレーナに質問した。

「ねぇセレーナ、あなたは以前水魔法でメチャクチャになった森を直してくれたでしょ？他にはどんな事ができるの？」

　セレーナが何でそんな事を聞くのかと疑問に思っているので、あかりは仕方なく魔物と契約した人間に攻撃された話をした。するとセレーナは怖い顔であかりに言った。

『まぁ、そんな危ない目に合っていたの？！メリッサ、私たち霊獣は攻撃魔法も防御魔法も治癒魔法もできるわ。だからメリッサが危険な目に合った時はすぐに呼んでちょうだい。きっと手助けできるわ』

　セレーナは、危険なイタズラをした我が子を叱るように怖い顔をして言った。そして慈愛に満ちた顔になってあかりに言った。

『ねぇメリッサお願いよ。貴女が大切なの』

　セレーナの瞳があかりを心から大切に思ってくれている事がわかった。あかりは嬉しさと申し訳なさの入り混じった気持ちで答えた。

「セレーナ、心配かけてごめんなさい。心配してくれてありがとう」

　あかりはセレーナの首に抱きついた。セレーナはあかりのほほに顔を擦りつけて言った。

『そうだメリッサ、私の養い子を紹介するわ』

　そう言って、セレーナはグラース、と呼んだ。セレーナの側にもふもふのユキヒョウの子供が姿を現した。銀色の毛並み、身体の黒い模様。そして背中には小さな翼が生えていた。あかりは思わず叫んでしまった。

「可愛い！」

『ぼくグラース。メリッサこんにちわ』

「こんにちわグラース。あなたに会えて嬉しいわ」

　あかりが両手を差し出すと。小さなグラースはとてとてやってきてあかりの腕におさまった。あかりは可愛さのあまりグラースにほおずりをした。グラースはあかりのほほにすりつきながら言った。

『ぼくもメリッサに会いたかったの。メリッサ、みんなママを助けてくれてありがとう』

　あかりと、周りにいたアスランたちはグラースの愛らしさに目を細めた。あかりの側にいたティグリスがセレーナに言う。

『セレーナおばちゃん』

　セレーナはティグリスを愛おしげに見つめ、自身の側に招きよせた。セレーナはティグリスの顔を優しく舐めながら言った。

『やっとレオと会えたのね？彼、泣いて喜んでたわよ？ティグリスが元気で無事だった。契約者の女の子は、ティグリスの事を大切にしてくれていたって』

『えっ、オヤジ泣いてたの？！』

　セレーナは少し怖い顔を作ってから、そうなのよ。と言った。ティグリスはパタパタとあかりの側に来て、モジモジしながら言った。

『なぁメリッサ、オヤジ呼んで？』

　あかりは微笑んでうなずき、レオ。と言った。あかりの側に、雄々しいライオンが現れた。ティグリスがすかさず自身の守護者に飛びつく。霊獣レオは怖い顔を崩さずティグリスに声をかけた。

『ティグリス、いい子にしていたか？』

『当たり前だろ？俺はいつもいい子だぞ！なんだセレーナおばちゃん、オヤジ

泣いてないぜ？』

　ティグリスはレオの背中に乗りながら、ヒョウの霊獣セレーナを見た。セレーナはクスクス笑っている。レオはセレーナを見ると合点が言ったらしく渋面を作って言った。

『セレーナ、グラース来ていたのか？何かティグリスに吹き込んだな？』

　あかりはライオンのレオ、子虎のティグリス、ヒョウのセレーナ、それにユキヒョウの子供グラースを見て微笑ましい気持ちでいっぱいになった。彼らは仲の良い家族のようだった。

　ライオンの霊獣レオは、あかりの疑問を聞いておごそかに答えた。

『私の光魔法についてしっかり説明していなかったな。私は一定の範囲の空間の時間を停止したり、巻き戻したりできる。だが広い範囲は無理だぞ。メリッサ、何かあれば遠慮なく私を呼ぶのだぞ？』

　あかりはレオとセレーナにお礼を言った。そしてあかりの鞭に、レオの光魔法とセレーナの水魔法を吹き込んでもらった。レオとセレーナとグラースは帰って行った。

　次にあかりは狼の霊獣ルプスを呼んだ。ルプスはあかりの周りが特に危険ではない事に疑問を感じているようだ。あかりに危険が迫ったから呼ばれたと思ったのだろう。あかりは何の用もなく呼び出した事をわびてから、ルプスの近況を聞いた。ルプスはあかりに仲間の霊獣救出の活動の事を話してくれた。

『私たちは、人間のゼノたちの協力で、悪い人間に捕まった霊獣を保護する事に成功している。これもメリッサたちのおかげだ、ありがとう』

「そんな事ないわ。ゼノおじいちゃんとルプスは志しが同じなんだもの。協力できるのは当然だわ」

　あかりはルプスからゼノとの共闘の話が聞けて嬉しくなった。ゼノたちと別れてから、ずっと気になっていたのだ。あかりはルプスにも頼んで鞭の宝石に、ルプスの雷の魔法を吹き込んでもらった。ルプスは帰り際、あかりたちから少し離れた木に寄りかかって座っているグリフを見て言った。

『メリッサ、お前の群れに人間が一人増えたな？あれは何と言うのだ』

「グリフという魔法使いよ？グリフがどうかした？」

『いや、何でもない。ただあの人間から少し懐かしい匂いがした気がしてな』

「懐かしい匂い？」

『どうやら私の勘違いのようだ。メリッサ、何かあったら私を呼ぶのだぞ？ではさらばだ』

「ありがとう、ルプス」

　ルプスはあかりの側からフッと消えた。あかりはルプスに魔法を入れてもらった鞭をギュッと握りしめた。