第8話 かゆうま
その雑炊屋のつくる粥はまずい。
いやまずいを通り超して、致命的ですらある。
当時の衛生状態はひどいもので、売れればかまわないと思う商人も居た。
現代でも痛んでも大丈夫という人もいる。
利点といえば安い事。
一文二文で腹一杯になる。
貧乏人には生命線ともいえるが、食してあたれば死んでしまう代物だ。
「安いよ安いよ」雑炊屋は今日もえたいのしれない
肉やら野菜やらを煮込んでいる。
決してうまそうな臭いでもないのに、食べる客はいる。
そこに六尺はありそう大男がきた。
「おれにもその粥をくれ」
雑炊屋は思案をした。
「この客に変なものを食わせて腹でもこわされたらやっかいだな」
普段は非力な貧乏人相手だから怖くも無いが
この大男が暴れたら洒落にならない。
「このかゆは、お客さんの口に合わないかも」
やや言いよどみながら告げると
「旨そうな臭いだ、金はここに置くから早く食わせろ」
大男は催促する。
雑炊屋はなるべく腐ってなさそうな部分をすくいとる。
大男は、うまいうまいとたいらげる。
「もう一杯くれ」そういうと何杯もおかわりを頼む。
「どうだ俺の国の料理番にならないか?」
いきなり切り出す大男
雑炊屋は困惑しながらも、貧乏人相手にするよりもましと考えた。
「いいですよ、どこにでもいきます」
大男は満面の笑みをたたえると、明日に迎えに来ると言い残して帰った。
翌日に雑炊屋は、いつもの場所に立っていると
大男が迎えに来た。
雑炊屋はおどろいた。赤鬼が目の前に居る。
赤鬼は雑炊屋の首根っこを掴むと走り始め、深い洞窟を通って地獄についた。
「今日からここが、お前の職場だ」
「肉はこのあたりの死人を使え」
言い捨てると、大釜の場所を指して仕事をしている。
死人をなぶり裂く恐ろしい光景の中で、雑炊屋は汚泥と腐肉を
集めながら、粥を作る。
地上では考えられないような臭気のなかで嗚咽を漏らして
作り終えると、鬼が仲間を伴い戻って来た。
「この雑炊屋の粥はうまいぞ」
みな喜んでたべているが、雑炊屋は自分の腹も減っている事に気がつく
「俺にも、なにか食わせてくれ」
鬼は不思議そうな顔をして「この粥を食えば良かろう、お前が作ったのだから」
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