第42話 空を駆ける箒星
一直線に空を切って空に飛ぶ。地表はどんどんと離れ、すぐに雲の上に出た。空は広大で果てがない。目標の物体もすぐに見つけた。少し位置はズレたが、ほぼ街の中央上空の位置からすでに落下を始めていた。私は全速力でその魔導兵器へと箒を飛ばした。その刹那、前方から魔法を感知した。無意識的反応で私は無属性防御魔法を展開する。攻撃は闇属性魔法であり、明らかに魔導兵器から放たれたものだった。
(尋が発動した? それとも、魔導兵器の防衛魔術的なものが施されてる? どちらにしても近づくには躱し続けないと)
私は的を絞らせないように回避行動を行いながら近づく。それでも魔導兵器からの闇属性魔法攻撃は正確にこちらを捉え、飛んでくる。
防御魔法で弾き散る闇の飛沫、青空を背景に周囲を彩るその色は、根強い負の感情が混じっているような、そんな悪寒を感じさせるすごみがある。私は空に心を向けて願った。このままだとこちらが不利になる。一気に近づく必要がある。
青空から強風が運ばれ、それは追い風となる。私は箒に魔力を流してスカイラインモードを作動させる。脚を掛ける所が出てきて、箒の形状もよりスリムに変化する。出来る限り身を縮め、空気抵抗を無くす。同時に箒の毛の方に意識を集中し、そして追い風と共に一気にトップスピードを越え、魔導兵器に声が届くほどの距離へと近づいた。
「尋! もう大丈夫、助けに来たよ!」
私は大声で呼びかけるが、何も反応はない。その代わり、魔導兵器から顔を覗かせたのは、闇属性で作られた人間だった。よく見ると、それは尋と全く同じ顔をしていた。
「アルマリアさん。彼に一体何を話しに来たんですか」
「君は、あいつの魔術で作られた影って感じかな。悪いけど、君と議論してる時間はないんだ。尋を連れ出させてもらうよ」
「あなたは全く分かっていなかった。彼の心と向き合ってすらいない。そんな人間に彼はついて行かないよ」
「……そりゃ、会って短期間で人の心が分かったら天才だよ。あいにく私はそういう技術はなくてね。そういう性悪なことを言うようにされてるの可哀そうだね。しょせんはあいつが作った魔術の影、それっぽい適当なことを羅列する。尋をたぶらかした言葉も、私には意味ないよ」
私は風属性のナイフを飛ばし、闇属性の人形を消し飛ばす。同時に中の様子が透けて見えるようになり、尋の姿を確認することが出来た。
「尋、聴いてほしいことがあるんだ。お願い、聴くだけ聞いてほしい」
私の言葉に、中に入って眠っていた尋は目を覚まし、ゆっくりと私の方を見てくれたのだった。
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