第39話 闇の魔術師との決戦 ①
「ポプラ! あれって、もしかして、あれだよね?」
「ちゃんと言葉にしてほしいけど、言いたいことは分かるよ。一種の簡易降霊術だわ。あいつは錠剤型にしたものを呑んで一時的に発動させてるって感じだった」
「降霊術ってことは、つまり一時的だけど、悪魔憑きになったってこと?」
「そうだよ、アルマリア。あんたは悪魔憑きとの戦闘は経験ある?」
「……どうだろう。厳密には分からない」
「まあいいわ。とにかく、今のあいつは強くなってるって認識でいないと、返り討ちに合うってこと。気を付けなよ」
私は頷き、構えた。すでに魔法の準備は出来ている。ベリーは折り畳み式の短弓を取り出し、砂鉄のナイフを矢の代わりにして構え、ポプラはアルテロッドのシンボルを上に持ち、魔法主体の戦闘態勢を整える。私の集中はどんどんと上がっていき、物音は必要なものしか聞こえなくなった。
ヴォルフは闇属性小魔法の速連射を開始。弾丸やナイフ、斧や嘴の尖った小鳥など多様な形に変化させ、私たちに襲来する。瞬時にポプラが全員分の光属性防御魔法で盾を作り出し、すべての攻撃を浄化する。ベリーは動きを開始し、四方八方から砂鉄のナイフを射出してヴォルフを牽制する。私は中距離から風、水属性を準備し、中魔法で攻撃を開始した。もし奴の悪魔の能力が一時的に使える状態なら、あれは確実に使ってくる。そして、あれの対処を考えるなら、ある程度の距離は保たなければいけない。
「ふん、そんな軽い攻撃で勝てるとでも思ってんのか! 見せてやるよ。悪魔の力が宿った戦いってやつをな!」
私の予想とは裏腹にヴォルフはあれを発動させた。悪魔の
「破壊出来ねえ鎖をどう対処するんだ? 見せてくれよ!」
私は体に風属性を纏い、移動能力を底上げし、回避していく。後の二人のことを見る余裕はないが、二人も容易に回避はするだろう。
「嵐の刃。歩み止めることなく、無限を貫く槍となれ。『オンスラウト・ゲイボルグ』」
私はタイミングを見て風属性大魔法を詠唱発動させる。オーソドックスな風属性大魔法は大きな槍となって強風をまき散らしながらヴォルフへと飛ぶ。しかし、その風の槍は悪魔の鎖によって弾き飛ばされてしまった。
「なるほど、悪魔の鎖を防御寄りで使ってるってことね」
「やはりこれを知ってたか。流石、噂以上の魔術師だぜ。だがな、物事を隠すのはこっちが上だったな」
奴の言葉が終わったと同時に、私の体は鎖で縛りつけられる。即座に体全体に激しい悪寒が走る。私はなんとか意識を保つように意識を集中させた。
奴は子の隙を逃さない。鎖にさらなる闇属性魔法を流し、追撃をしてきた。私は意識を集中させる。ふと、大穴の開いた天井から覗く空から、風が流れて来た。私はその風を受け、そしてそれを自身へと流す。私の魔力を混ぜ合わせた自然風は徐々に強くなった。
「はっ!」
一気に力を解放する。自然風は悪魔の鎖をも跳ね返し、拘束を強制的に弾き返した。すぐさま後方へと飛び、距離を取る。
「破壊出来ねえ悪魔の鎖を弾いたとか、お前の属性は本当にやっかいだよ」
「厳密に言えば、破壊は出来ないわけじゃないけどね。今の私なら、あんた程度の技量の悪魔の鎖、どうってことない」
私は奴に言い返して睨む。怒った奴は闇属性魔法を再び速射した。その攻撃達は、私に届く前に、支援に戻ってきた二人によって遮られた。
「流石はアルマリアだね! 私たちよりうまく戦ってるよ!」
「ま、流石は国境なき騎士団のエースの一角って感じ。ほら、油断せずに行ってよ」
私は箒を構え直し、次の攻勢に移ったのだった。
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