第37話 心に眠る反撃の想い

「両側のやつらは私たちが抑えるからアルマリアはあいつをやろう! 行くよ!」


 ベリーが先に飛び出し、続いてポプラも続く。二人は飛んでくる気絶や痛みの魔術を弾きながら接近していった。

 私もヴォルフを視線にしっかりと入れる。飛んでくる痛みの魔術を無属性防御魔法を使って防ぎ、こちらは風属性と水属性を使って攻撃を開始した。

 ヴォルフの戦闘スタイルは魔術を使った状態変化を基軸とした戦い方と見える。痛みや麻痺などの魔術で動きを止め、最後に属性魔法で仕留める。このやり方をする人たちは少なくない。魔術は慣れれば撃ち出しが早いため、対処に油断は出来ない。ただ、防御魔法で基本的に防げるし、相手の技量によっては魔力抵抗で被害を抑えることも出来る。私は攻めの意識を強く持ち、小、中魔法を四方八方から撃ち出してヴォルフを追い詰めようと攻める。

 ヴォルフは私の攻撃を防ぎ、黒い霧を出して姿をくらました。私はすぐさま風属性でその黒い霧を晴らしたが、すでに姿は消えていた。私は一呼吸入れ、氷属性の剣を作り出し、自身の背後を向いて斬りつけた。タイミング良くヴォルフが出現し、奴は防御魔法を使ってその斬撃を防いだ。魔法を使うもの同士の中、近接戦闘は速さと手数が勝敗を決める。私は氷属性と雷属性を使い、短剣や小鳥、小型犬を使って陸空の2つの空間から奴に攻撃を絶え間なく与え続ける。奴は魔術だけでは対応しきれず、闇属性魔法も発動して私の攻撃を耐えていた。


「ちっ、やっぱ強えな旅人アルマリアさんよう。調べさせてもらったが、なあ、あんたも学生時代に色々と嫌な想いをしたんだろ。嫌な想いをたくさんしたんだろ」

「したんだったら、なに?」

「それならあんたも心のどこかで抱えてるはずだ。理不尽な社会をなんとかしたいってな。俺たちブラッククロスは、その理不尽で搾取をする社会に対しても活動してるんだ。分かるだろ? 反撃したい気持ちがあっても社会的に出来なかっただろ?」

「……」

「あの少年もその反撃したい気持ちを抱えてんだよ。いくら人との温かい関りを持たせて、コミュニケーションを取ることを意識させたって、根底にあるその反骨精神をなんとかしてやらねえと結局意味ねえんだよ。あんたなら分かるだろ? 似た境遇を受けて来たんだからよ」


 ヴォルフの闇属性魔法のカウンターが私に襲い掛かる。反応に遅れた私は無意識に発動させた防御魔法を纏い、その攻撃を受けてはじけ飛ぶ。最低保証の防御魔法はあまり意味をなさず、体に痛みが駆け巡る。私は追撃を恐れ風属性魔法でむりやり体を起こし、奴から距離を取った。


「あの兵器は搭乗者の心の攻撃性も反映する。なんなら、今ここで見せてやるっすよ。あの少年の怒りをよ」


 そう言い、ヴォルフは尋が入った球体の魔導兵器に向けて杖を向ける。私はすぐさま風属性魔法で奴を狙おうとしたが、それはすぐに止められる。


「アルマリア、防御しないと、あれはヤバいよ!」

「まったく、あいつらすでに発動準備してたの糞過ぎ。アルマリア、もう間に合わないから一旦回避しなきゃやばいから」


 ベリーとポプラが私の傍にきて早口で言う。そして可能な限り奴から距離を離れるように駆けだした。

 見ると、いつの間にか洞窟上空中央に魔導兵器が移動し浮遊していた。


「さあ見せてみろ。君の心に宿る反撃の想いを! すべてを破壊せよ! 『エンドブレイク・ハート』」


 ヴォルフの発動詠唱の後、辺りは一瞬にして光に包まれる。そして、球体を中心に凄まじい発生した爆発が、巨大な音と共に爆発したのだった。

 

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