第36話 悪の世界
私たちはヴォルフたちが居る場所へと歩く。周囲を警戒するが、今この場にいるのは奴だけらしい。
「ヴォルフ・エルミート。あなたは今、国際指名手配犯になっている。ここで国境なき騎士団に大人しく捕まった方が身のためだと警告しておく」
ポプラがいつもよりも丁寧でかつ強い警告の言葉を奴に話す。当然、奴はその言葉にはのらない。
「ただの民間組織のくせによく言うっすね。そっちの方が何されるかわかったもんじゃねえし、どっちにしても捕まるのはやめておくっすよ。しかしまあ、他人のことなのにご熱心なことだぜ全く。そういう身勝手な正義感は一体どこから生まれたんすかね。今度酒場で酒飲みながら語り合いたいもんだぜ」
「いやいや、あなたの行動は明らかに人道的に反してることだし、人とか都街とか、国とかに悪い影響が明らかにある行動してるからね! こっちももう色々と調べがついてるんだから!」
「それに、今まさに子供を誘拐した。良くもまあそんな言葉を言えるね」
私も強く奴を非難する。奴は全くと言って良いほどに響いていない。
「おっと、勘違いしないでもらいたいが、この子は誘拐したんじゃないっすぜ。本人の意志で会いに来て、この中に入ってるんだ。アルマリアがやってることは何の意味もないことだって気づいてな。ただクエストをこなすだけで、自分自身も何も変わんねえってことが身に染みたんだろうな」
「それで、あなたのその偏った意見をいかにも世間一般的で正しい意見のように彼に吹聴したってところかな。大体あんたみたいなクズはいい加減なことを吹聴して不安にさせて操作するのが得意だからね。だからもうあんたの言うことはどうでもいいから、尋を返してもらうよ」
私は再び近づくために歩き出す。しかし、その足元に麻痺の魔術が飛び、牽制された。
「返すわけねえだろうが。やっと手に入れた無限燃料なんだからな。しかも心が不安定で燃料を取り出すのも簡単と来てる。こんな存在が目の前に居たら、どの国も手に入れようとするくらいなエネルギーだぜ」
「人を燃料扱いとか、本当に屑の塊だね。それで、あんたは何をしようとしてるの? 世界でも破壊する気?」
「当たり前だろ。って言いたいが、別の使い道をブラッククロスは考えてる。細かくは、言うわけねえだろバカが」
奴の両隣から黒い霧が出現し、そこから2人の黒いローブにフードを深くかぶった奴らが2人、出て来た。
「そんじゃ、始めますかね。あんたらに邪魔されるわけに行かないっすからね。あんたらをぶちのめして、手始めにアルマリア、あんたとこの子の思い出のあの街を吹き飛ばす」
彼らは指揮棒型の杖を構える。私は箒型の杖を、ベリーは大型の短剣を2本、ポプラはアルテロットを構え、迎え撃つのだった。
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