第35話 見つけたいもの
歩く音が反響し、静かな洞窟は私たちをどんどん迎え入れる。しかし、敵が出てくる気配はなく、ただ道が続いていた。
「ねえ、さっき話に出てた魔導兵器って、一体どんな兵器なの? かなり威力あるタイプ?」
「うん、それはもうすごい威力だよ! 簡単に言えば、無限の巨大爆弾ってイメージかなぁ。標的の上空に時空間属性魔法で移動して、落下しながら標的の頭上で大爆発を起こすんだよ! 普通の魔術師たちが集まっても再現できないほどの威力を簡単に出しちゃうんだ!」
「まあ、それを動かすには相応の魔力充填をする必要もあるけど」
「それって、つまり、もし私の考えが当たってるなら、尋はその兵器の……」
「うん、その兵器の無限エネルギー供給の大元の核にされてる可能性は高いね。異世界から来た彼には、潜在的なエネルギーが膨大にあるんだよ。普通ならそれを取り出して使うのは相当難しいけど、多分奴らはその技術を考古学者たちからの尋問で方法とか聞き取ってるはずだよ」
今まで出会った学者の人たちも、恐らくは奴らに狙われていたのだろう。こう思うと、今までの私たちの道のりはすべて、やつらブラッククロスの影があったのだ。
「もしそうなら、私がそんなことさせない。巨大無限爆弾のエネルギーなんかにさせないよ」
「もちろん! そんな非人道的な扱いは、国境なき騎士団としても許せないからね! それに、あの組織はこれだけじゃない、色々な犯罪行為に手を染めてるから、どちらにしても国際的な要注意組織になってるし、奴らを捕まえて国境なき騎士団も正式な国際組織にしなきゃだしね!」
「ベリー、今はそんなこと考えなくて良いから。そういうの苦手だから、第一団長をエルムにしたんでしょ。だから余計なこと考えずに、今は目の前の悪を正義の鉄槌で潰さないと」
「そうだね! ポプラの言う通りにするよ! さて、そろそろ洞窟に入って結構歩くけど、どう、彼に近づいてる?」
「近づいてなきゃここまで歩いてないって。確実に近づいてる気配する。アルマリアの読みが当たったね。今回は素直に褒めてあげる」
「いつも素直になればもっとかわいいのに! でもほんと、すごいよアルマリア!」
「うん、まあ、直感もあるけど、これがあったからね」
「それは、リボン?」
「彼とクエストをやってるときに報酬でもらったんだ。尋に受け取ってもらったんだよ。これがこの洞窟の入り口に置いてあって、もしかしたらって思ったんだ」
「そっか! やっぱり彼は、アルマリアに見つけてほしいんだよ。アルマリアじゃないとだめなんだと思う。ほら、早く行こ!」
ベリーは私の手を取り、駆け出す。私は彼女に釣られて走り出した。空のない洞窟の下で感じる風は、どこか焦っているように感じた。
長い一本道は終わりを迎える。向こう側にあからさまな目くらましの魔術で黒い靄がかかっている場所があった。私たちは無我夢中でそこへ走る。私たちを妨害する敵は誰一人いない。例え罠だったとしても、私たちはその罠に飛び込んでいく。
黒い靄を突き破り、そこに入ると、広い空間に出た。その奥に、大きな球体の物体と、あの男、ヴォルフがいた。そして尋は、その球体の中に入っていたのだった。
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