第30話 想いの決意

 夜空は快晴。涼しい風が心地よく体を通り過ぎ、雲が流れていく夜。私は箒に乗って街の上空を散歩していた。尋は疲れてすでに眠っている。

 あの後、街に戻ってきた私たちは改めて誘拐された子とその兄の学生からお礼をされた。誘拐された子から尋に手作りのネックレスをもらい、彼は照れながらも喜んでいた。あの時の彼の表情は心の底から喜んでいるものだと、直感で感じている。

 尋と出会ってからそれなりに時間が経つが、彼は出会った当時から比べて、随分と変わったと思う。言葉に強みが出ているというか、弱弱しい雰囲気がなくなった気がする。別に弱弱しいことがいけないことだとは自分は思わないが、尋はそう思っていないのだろう。変わりたい自分を想い描き、私と一緒に行動した時間内で前に進んでいる。それが実現出来ている力こそが、彼の潜在的な能力なのかもしれない。


 ブラッククロスの動向が怪しくなって来ているのは気になるところだ。彼らは確実に尋を狙っている。恐らく、彼が一人行動をしている時に何かしらの魔術を使っている可能性は否めない。

 何かを準備しているという状況は目に見えて分かる。私も気を緩めてはいけない。安い正義だが、それでも彼の身を案じ、守りたいと思う自分の気持ちは本物だ。

 

 私は改めて気持ちを強く持ち、部屋へと戻ったのだった。

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