第29話 終結

私たちの大魔法が真正面から衝突する。水属性、氷属性、闇属性が入り乱れ、衝突する度に発生する衝撃は周囲をなぎ倒す。そして、決着がつくことなく、それぞれの大魔法は弾け、消えたのだった。


「流石っすね。実力を認められた旅人と騎士なだけはある」


 ヴォルフは余裕の表情を見せながら、私たちを見る。彼の様子から見ると、これ以上の戦闘はするつもりはなさそうに見える。


「でも、こっちの方が先に行ってるんすよね。あんたらは追うことしか出来ない。せいぜい、必死に追ってくるんすね」


 最後に意味深な言葉を残し、彼は移動魔法を用いてその場から消えた。私たちもやっと警戒を解くことが出来、疲れが体に出てくる。


「ふう~ひとまずはなんとかなったね! これでゆっくりと誘拐された子を探せるよ!」

「そうだね。でも、その子ももう見つかったみたいだよ」


 私は建物の玄関から覗く彼の顔を見てそういった。尋は私たちに手を振り、誘拐された子をおんぶしていた。私たちは合流し、依頼主の学生の元へと戻り、街へと戻ったのだった。


 こうして、誘拐事件は幕を閉じる。その一件が、最後の戦いに繋がる出来事だったと知らずに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る