第28話 想い貫く言葉

――尋――

 

 僕はアルマリアさん達と離れ、指示された方角へと向かう。自分の役目は、アルマリアさん達が陽動として目立ち、その間に家屋にいるはずの人質を助けること。かなり難しいことかもしれないけれど、それでもやり遂げたいと決意し、こうして行動に移している。この夢の異世界に来てから色々と行動に移して、自分でも少し変われているか、自分自身でも確認したかったのかもしれない。

 僕は緊張する胸を落ち着かせながら歩みを進め、そして目的地の家屋が見える場所まで来た。見ると、すでにブラッククロスの男が外に出て、アルマリアさん達と何かを話している様子だった。僕はその隙に茂みを利用して家屋に近づき、裏口から家屋の中に入った。


 中は驚くほどに静かだった。僕の歩く音しか聞こえない。その状況のため、僕は駆け足で部屋をしらみつぶしに探していく。そして数分、最上階の一番奥の部屋のドアを開けた。


「はあ……はあ……見つけた」


 そして開いたドアの先に、その少女はいた。汚れたベッドに横たわり、静かに目を閉じている。起こしてくれる王子様を待っている、プリンセスのように、穏やかな顔をして。

 僕は一歩、部屋に入る。すると突然、足元に魔方陣が出現し、発光する。驚いた僕は後方へと尻餅をついた。瞬間的な痛みに目を閉じる。しかし、その目はすぐに開くことになった。


「ねえ、君はなんでこうまでして頑張るの?」


 あまり聞きなれない、しかし毎日聞いているはずの声が、聞こえるはずのない声が聞こえた。僕は目を開ける。そこにいたのは、僕だった。


「君は、僕?」

「なんで、君は人のために頑張るの? 自分のためにならないのに」

「……それは、色々なことを経験すれば、巡り巡って自分の力になるはずだって、思ってるから」

「うそだね。本当は、自分を安心させたいだけ。人に好かれたくて、寂しくて、それらを埋めるために他人を利用してるだけだよ。人のためにやってるんじゃない。自分の承認欲求を満たしたいだけだ。それを、きれいごとを並べて、それらしいことを言って、雰囲気をわざと出して、他の人をその気にさせて利用してる。うまく行けば人に好かれるし、上手く行かなくても、かわいそうな自分を演じて次の人に泣きつく。結局、他人に依存して自分を満たしたいだけさ」


 その少年の言っている言葉はすべて、自分自身の心に突き刺さる。それは、誰にも言わず、自分自身も見て見ぬふりをしていた、自分の醜い心だった。見事にそれらを今、無理やり直面させられ、僕は血の気が引き、心臓が跳ねる。


 僕の姿をした誰かは言いたいことを言って満足したのか、いやらしい笑顔を浮かべて消えた。僕は複雑な心を抱えながら、少女の方へと歩み寄ったのだった。

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