第1話 始まりの出会い

アルマリア


 今日は晴れ。ちぎれ雲が空色のキャンバスを彩っている。今日も今日とて空中散歩を楽しむ私は流れる風に撫でられ、心地よい気分に浸る。

 

(今日も平和な一日になるかな)


 最近は色々な出来事があって時間が経つのが早く感じる。退屈はしないが、しばらくはのんびりとしたいものだと、地上を仰ぎ見ながら思っていた。しかし、今の地上では、見慣れない服の少年が、3人の盗賊たちに追われているのが見えた。速さ的にいずれ少年はそいつらに捕まるだろう。見かねた私は、少年を助けることにして急降下した。降りている途中、少年が私の方を見た。驚いた顔をしていたが、前を見ておらず、石につまずき、豪快に転ぶ。すぐさま盗賊たちに囲まれたが、その盗賊と少年の間に割って入るように降下した。私の登場は盗賊たちも驚いたようだ。


「なんだ、姉ちゃんよ。俺たちに何か用かよ」

「遊びてえんなら夜にしてくれよな。俺たちは今仕事中でよ」

「そっか。なら、その仕事を邪魔しに来たよ」


 少年の方を見ると、呆気にとられた顔で私を見ていた。その目はとにかく映るものすべてに恐怖と驚きを感じている様子だった。


「大丈夫だよ。私が守るから」


 そう言って、箒を掲げて、風魔法で盗賊たちを吹き飛ばそうとした。盗賊たちは飛ばされないように踏ん張り、剣を構える。


「しょうがねえな。お前も一緒に売り飛ばしてやる。人2人分の金がありゃ随分遊べるぜ」


 盗賊たちは一斉に私に向かって襲い掛かってきた。私は水と氷、そして地魔法を使い、水で剣を受け止め、氷で剣を凍らせ、岩で剣を弾く。すぐに風魔法を再び発動して、こんどは先ほどよりも強い力で盗賊たちを吹き飛ばした。



「くそ、しょうがねえ。今回はこれで 許してやる!」

「くそ、剣が折れちまったじゃねえか。買う金ねぇよ」

「それならまた盗めば良いだろ。ほら、行くぞ」


 盗賊たちは戦意喪失して、そそくさと逃げていった。


「ま、こんなもんかな」


 私は少年の方を見る。少年は、完全に物事を理解できていない表情で、唖然として私を見ていた。ひとまず私はしゃがんで、少年に話しかけた。


「やあ、けがはないかな? 安心して、もう盗賊は逃げたよ」


 少しして、少年の口が開く。


「今、何が起きたんですか。何が、どうなっているんですか……なんで、水が、氷が、岩があんな風になって出て来たんですか」


 少年は、恐らく魔法を知らないのだと、その発言で私は理解した。

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