第16話 龍の首の珠
「誰でもいい。龍の首の珠を持ってきた者はなんでも望みの褒美をやろう。」
俺様こと大納言大伴御行様は、家臣に布令を出した。
出したんだが・・・
ええい、どれだけ待たせるのか!!
龍の居場所すらわからぬと申すのか!
俺様はふがいない部下どもに叱責する。
そうしてしばしの時が過ぎ・・・
やっと、龍の居場所を見つけた、なんていう進展がもたらされたのだが・・・
まったくなんて情けない奴らだ。
海の向こうの小さな島。その中心の火を噴く山の頂に龍は巣を作っていて、その首元には深紅の珊瑚を水晶で覆ったまん丸の珠を光らせていた、と言うのだから目的の物に違いない。
場所も目的の物も見てるのに、島に近づくことすらできない、だと?
どうせ怖じ気づいて、島に入りもせず戻ってきているのだろう。
ええいままよ。
部下どもが怖じけるなら俺が、俺様自らが行ってやる。
この手で龍を屠り、首の珠を取ってきてやるぞ。
なんせ、俺様がかぐやを娶るのは確実だからな。
新居だって、ほぼほぼ完成だ。
かぐやの両親、いや、祖父母なのか?彼らも新居に目を輝かせている。
将を欲すればまずその馬を射んとなぁ。
ハッハッハッ!
親受けは抜群。これで龍を屠った猛者ともなれば、かぐやも俺に首ったけだろうさ。
皆のもの、出陣じゃあ!!
「
そう言いながら部下が海に投げ出された。
一体何がどうなっている?
さっきまで晴天で、海も大凪だったぞ?
なのに・・・
しばし時間を遡る。
ご機嫌に勇ましくも海に出た俺様だった。そうあの島を目にしてこうなるまでは・・・
島は海の中にぽつんと浮かぶ山に思われた。
山からは白い煙が出ていた。
青い空に流れるその煙が、ただ一筋の空の模様だった。
島に近づくにつれ、微風が起こる。
そして、山のてっぺんから空に向かう巨大な長い龍。
それはまさしく龍だった。
「いね!」
我らが奴を見たと知ると、海と空を震わせて、ごおっと音がした。
その音が、「
おびえる者もいたが、我は武にその人ありと言われた大伴御行だ。
「進め、進めぇ!」
風に負けぬ声を張り上げて、俺様は命じたんだ。
そして・・・
ゴォッ
瞬く間に、海が荒れ風が暴れた。
大嵐が、島からこちらに向かってやってくる。
ともに連れてきた舟たちはあっという間にひっくり返った。
それらより幾分大きいこの船は多少耐えた、のだが・・・
「主様!このままでは持ちません!」
舵を取らせていた者が必死に叫ぶ。
宝は目の前。
だが・・・・
「くぅ。撤退だ!」
無事拾えるだけの部下を収容。
この船も、今にも沈みそうに所々壊れている。
これ以上は無理、というのは嫌でも・・・
くっそう。
かぐやを諦めるのと、部下を諦めるのは、前者を取るべきだ。
俺は・・・負けたのか?
龍に、・・・いや、かぐやの挑戦に負けた・・・のだろうか?
くっそう、俺は負けるのが何より嫌いだ。
しかし、あんな龍にどうやって勝てるというのか?
かぐやは知っていたのか?
知っていて俺をけしかけ笑っていたのか?
あぁなんて性悪の女だ。
冗談じゃ無い。
やめだやめだ!
顔だけで性悪の女なんか、こっちから願い下げだ!
もう奴のところなんていくもんか!!
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あららら・・・
本当にあったのね、龍と龍の珠。
ていうか、あれってばどう考えても魔石、よねぇ。
火山が魔力だまりになってるのかしら。
情報は完璧ね。
近いしとっとと、魔導具を設置しなきゃ。
にしても、なっさけないわねぇ、あの大納言大伴御行っていう男。
脳筋丸出しでおバカだって思ってたけど、自分の思い通りのにならなかったら人の悪口を言いまくるなんて子供か!って原住民だったわ。知性なんて子供以下なんでしょ。
悪口言われたからって私には関係ないし。
だって、原住民の社交界なんて、興味ないもんね。
でも、ちょっとやっかいなのは、ここのトップ、帝とかいうのに気にかけられちゃったみたい。
上層部の人間を利用するのは最適解だと思ってたけど、一番のトップはダメよね。権力で好き放題されちゃ、対抗手段がなくなっちゃう。
最近は帝の使いとかいう内侍中臣房子とかいうのが来てじいさんたちとこそこそしてるみたいだし、やぁねぇもう。
帝とだって、付き合うつもりは無いんだからね。
私はとっとと刑期を終えて、文明社会に変えるんだから!
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