第14話 蓬莱の玉の枝
根が白銀、茎が金、実が真珠。
乙姫からの情報ではそうなってるのよねぇ。
それがあるのは東の海にある蓬莱山だっていうところまでは分かっている。
ただ問題は、私、船持ってないし。
まぁ、これは、今の私ならなんとでもなる。
乗ってきた宇宙船をちょっといじってもいいし、ね。
得意の錬金で乙姫の亀ぐらいのドローンならなんとでもなるし。
本当の本当に問題ってのは、その「東の海にある蓬莱山」ってのの場所なのよねぇ。乙姫に聞いても、「興味ないから知らなぁい。」って言われちゃったし。
そこで、欲しいものリストに入れておいたの。
現物なくても、場所が分かればこっちのものってね。
で、これに関してなんだけど、はぁ、ふざけんなって思ったわよ。
これをゲッとしようと動いたのは来持皇子。
まぁ、皇子ってぐらいだから原住民たちのトップの息子・・・の1人。
今、私のサロンに来るのはこのレベルの権力持ちばっかりになってはいるんだけどね。
ほら、仏の御石の鉢を提出した嘘つきも、石作皇子っていう同類だし。
でもさ、どうしてこう権力者の子供ってのは、ズルばっかり思いつくのかしら。
一応ね、来持皇子も蓬莱山を探したみたいなのよ。
もちろん部下に命じて、だけどさ。
あ、かなりの人数っていうか、船を出したみたいで、それっぽい島はいくつか見つけたって報告はあったみたい。
彼が得た情報は、ちゃんと例の方法でゲットして、コンピューターで精査中。
蓬莱の玉の枝って、どう考えても自生する植物ってないなぁ、って思わない?
ただ、どれも錬成可能な物、ではあるのよ。
金属なんかは、土を錬成すればそれなりに可能だし、真珠もカルシウムから作れる。
ってことは、この伝承って、単純に錬金術師の存在を匂わせているんだと思うのよねぇ。この未開の地に錬金術師なんていう高度な魔法知識を持つ存在が普通には存在するはずはないから、まぁ、私や乙姫みたく流された罪人がいたっていう証拠でもあるし、なんだったら、蓬莱山ってのが、錬金施設で、エネルギーを蓄えている、私はそんな風に推理しているの。
だからね、私が欲しいのは蓬莱山の在処の情報であって、こんなちんけなまがい物のプレゼントではないわけよ。
「やっと、姫の所望の品を手にいれたぞよ。いやぁ、苦労した甲斐があると思わないかな。ハハハハハ。」
なんてい大口開いて笑っている来持皇子に手に持つ扇子を投げつけてや・・・りたかったわよ。
まぁ、私は文明人だし、クールな女。そんな蛮族じみた行動は当然しなくてよオホホホホ・・・
「オホホホホ・・・さすがは、皇子様。ところで、そのように根を抜かれてしまえば、花もかわいそうですね。さっそく水瓶にでも活けませんこと?」
私はそう言って、水瓶を持ってこさせたわ。当然、たっぷりの水を入れた物をね。
ちなみに来持皇子が持ってきたのは、真っ赤な偽物。
一応、白金の根、金の茎、真珠の実でできてはいるけど、完全に職人に作らせた物。しかも、この未開の文明レベルではやむを得ないとはいえ、純度が低い。
表層はごまかせているかも、だけど、私の見立てではほぼほぼ鉄との合金で、しかもその鉄ですらまともに製鉄されてるかっていったら眉をしかめるレベル。
表面に施されたメッキ技術なんて、メッキではなく貼ってるだけじゃない?
だからこうやって水につけると・・・
「あら、これはどういうことかしら?」
根も茎も、何かが剥がれちゃって、ちょっと酸化を魔法で促したら、どんどん錆が出できたのよねぇ。
フフフ。言い訳できるかしら皇子様?
「な、な、これはなんと・・・?!」
見る見る酸化していく贈り物を見て、来持皇子は腰を抜かす。
でも、なんと!はこっちの台詞よ。
どこまでちゃっちぃもの持ってくるのよ!
「あらあらおかしいですわ。本物の蓬莱の玉の枝であれば、水を得れば生き生きと生き返るはずですのに。これでは、まがい物と言ってるような物ではありませんこと?」
私の言葉に、ヒィとかヘェーとか、奇妙な言葉を発しながら、這々の体で逃げ帰った皇子様。
「私を謀ろうとするお方は、お話ししたくありません。」
そんな様子を見ていた、いと尊き方達。
何人かは、供物を背後に隠したようだけど、まぁ、今日のところは見逃してあげましょう。
だって、蓬莱山の在処は、ちゃあんと分かったんだから。
後日。
海の中に浮かぶピラミッドを見つけたわ。
それは間違いなく、過去の錬金施設で、島そのものを移動させて分かりづらくしていたようね。
すでに放置されたってことは、まぁ、そういうことでしょ。
刑期を終えたか、何らかの・・・まぁ、結末を迎えたってこと。
でも、ここすごいわね。
海中からエネルギーを吸い出す仕組みを作ってたみたいでちゃんと稼働してるわ。
私はこれに、乙姫からもらった玉手箱の1つをセットして、エネルギーを保存することにしましょう。
それにしても・・・
確かにきれい。
本物の蓬莱の玉の枝は、私の美意識も満足させる、そんなものだったって、追記しておきましょう。
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