第11話 サロン
竹藪近くの屋敷に帰宅して数日。
ちょこちょことやってくる男たちを断るだけでも面倒だ、と思って、「みんなで楽しくお話ししましょう。」と呼びかけたら、いつの間にかサロンみたいになっていたわ。
はじめはものすごく驚かれたんだけどね。
女の人ってのは、ものすっごく隠されてるんですって。
身体の関係になるまで、顔も見せないのが普通だそう。
御簾っていう、すだれ越しの会話。しかも間に人を入れて、だって。声までお預けなんだそう。
なのに、あそこのお嬢さんは美人らしい、ぜひ恋人になりたい、って男の人は日参するのが、正しい恋の駆け引き、って・・・ないわぁ・・・・
だいたい見たことのない人のこと美人って、なんで分かるのよ。
て、言ったら、なんでも美人は黒髪をつやつやのまま長く伸ばすんだって。で、御簾の向こうから、ちらっと髪の毛の端をはみ出させているんだそうです。
それを見て「なんて美人なんだ~。是非もっとお近づきに!」ってなるんだそう。よくわかんない価値観よね。
まぁ、いろんなフェチがあって当然。種族的なフェチってことなのかしらね。
サロンをはじめて、まずはそんなことを聞いてみました。
あ、もちろんオブラートに包んで貴人らしい物言いでね。
これが無茶苦茶面倒なのよ。
ちなみに、海に行く前のときは私も一応御簾越しで会話してたのよ。さすがに、人を通しては話してないけどね。一応おばばが間に挟まって、こんなものもらった、的な報告をして、って感じだったの。
帰ってきて、私の目標、刑期を終えるためのME回収の手段、がやんわりと分かったってことで、もう面倒な情報収集もいらないし、なんだったら自分で集めて回るか、って思ったんだけどね、結構面倒な場所も多いんで、近づく男どもに協力させよう、って思ったのよ。失敗したって、姿を消すのは簡単だしね。使えるものは使っちゃう。それがインテリジェンスな文明人の処世術ってもんでしょ?
てことで、私、
「一人一人と内緒話するのも良いけど、殿方同士の理知的な会話を見たいし、できたら自分も会話に入りたいですわ。」
とかなんとか、ぶっちゃけ情報共有してほしいってのもあって、言ったのよね。
で、初回に、デーンと、御簾から、私、登場!てやったのよ。
フフフ、あのときのみんなの顔ったらなかったわぁ。
未婚女性が顔を堂々と見せてるって、驚愕ものらしくてね。想像以上の反響よ。
「女性自身をご開帳されたのと同じぐらいの驚愕でした。」
なんて後日告白した参加者もいたから、何?私ってストリッパーみたいに思われたわけ?顔出ししただけで、逆に失礼だと思わない?
でもね。こんなことで怒っちゃダメ。
相手は、いまだ文明が開化しかけの現地人。いろんな考え方があってしかるべき。
けどね、結局はコレが幸いしたのよ。
そりゃまぁ、異性と直接顔を合わせたことのない坊やたちなんて、チョロいもんだし・・・経験者だって、奔放に振る舞う美人には、出会ったことがないんだもの。
もちろん、魅了なんて使わなくたって、私は美人。当然、自然と魅了されていく男たち。
さらにね、サロンの開催、これが意外と役に立ったわ。
もともと、高貴な人が増えてきて、身分の低い人からリタイアしてたみたいなんだけどね。こうやって、まとめてドン、で会って話すと、身分とか気にしちゃう人は、さらに出てこなくなるのよ。
尊き方と同じ部屋で、しかも同等に会話など無理無理、って逃げちゃうの。
あとは
私が(もちろん犯罪にならない程度に)自然の摂理についての会話を振るのよね、ヒントを与えつつ、科学についての知識を与えるの。重力に雷、水に風、その原理を考えさせるように振る、とかね。
なんとまぁ、理屈にふつうに神様とか出てくるのよね。
それに疑問を持たないところも、まぁ、まだまだ文明が育ってないなぁ、と実感して私的には面白い。
そういや変人ってみんなに言われてる友人がいて、人類歴史学なんていう、人の発展と文明をテーマにした学問をやってるんだけど、現場こそ教師だ、なんて言ってフィールドワークばっかりやってるのよねぇ。つまりはいろんな文明程度の低い星へ現地人に擬態して潜入しては、しばらく暮らしてみる、なんてことをライフワークだ、とかいいつつやってるの。
今までは何が面白いんだか、って馬鹿にしてたけど、実際こうやって、科学のかの字も知らない未開人たちと会話していると、まぁ、ファンタジーな感じで面白いのよねぇ。
これが、自分の意志ですぐ脱出できるなら、楽しいだけで良かったんだろうけど、何年も続くって思うと、気が重いけどね。
まぁ、そんな感じで、ちょっとぐらい科学的なことを教えてもいいかな、なんて思って、サロンで話題を振ったわけよ。別に文明を進めようって言うんじゃないの。少しでも論理的な思考をしてもらうため。理知的に考える訓練として、簡単な科学のきっかけを与えようとしたってわけよ。
私としては、ある程度の人がまともな会話ができるようになれば、って思ったんだけどね。まさかの、こういうのもふるいになるのね。
頭がついていかない人から、リタイアしました。
ううん違うわね。
頭がついていかないことにコンプレックスを持っちゃった人からリタイアした、ってのが正解。
ていうのはね、結局残った数名は、ある程度私の意を汲んで会話できるようになってきた人と、なんでもいいから、ただこの場で美人さんと会話できればいい、っていうお間抜けさんの二極化した人達だけだったのよねぇ。
でもこれでいいわ。
前者は会話が楽。後者は私の言うことなら何でも聞く。
そろそろ、メンバーも固定してきたし、私への重度の心酔者ばかりが残ったわ。
これなら危険だろうと何だろうと、私のためにどこへでも行って、なんでもしてくれると思うの。
そもそもが、私がお宝大好きなのを知って、いろいろ貢いできた人達。
さぁ、私のために役立ってちょうだいな。
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